その1. Saharadja (サハラジャ)
■聴いた人1 キャンディー甲山
インドネシア無宿、東京では引きこもりの中年男。近ごろ年のせいか早起きになりました。
最初の出音ひとつで違いを見せつけてしまうミュージシャン、それがバリで活動するユニークな音楽集団・サハラジャのリーダーで、トランペット奏者のリオだ。彼らの演奏を聴くと、いかに「体質」というものが音楽を決定してしまうかが、いやというほど身にしみる。Jazzがまだフロンティアを目指していたあの時代の、nomadでチャーミングな表現が溢れているのだ。地元バリで彼らと双璧を成すグループといえば、やはりワールド・ミュージックの方法論を土台としたBalawan & Batuan Ethnicだけど、その両者が目指す地平はとても異なるように思えてならない。バラワンが目指すのが「回帰するための音楽」だとすると、リオのそれは「彷徨うための音楽」のように、僕には聴こえるのだ。
音楽を言葉に置き換えるのは、時として空しくもどかしい。しかもそれが大きな才能によるものであるほど、言葉は実体から遠ざかってしまうものなのだ。だから今回はあえてこれ以上ディティールを説明しません。どうかSaharadjaのライヴを、バリ島発の現在進行形Jazzを、いつかぜひ、ご自分で体験してみてください。