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 【[雑学]ヨーロッパ

世界遺産雑学69--辺境の地に神を見た世界遺産Vol.2--
2000.12.30
 
世界遺産雑学69

辺境の地に神を見た世界遺産Vol.2

--天下の奇観に住んだ隠修士--

中空に浮く
この意味を持つ場所
そこは奇岩の上に建つ修道院
世俗を捨て神にすべてをささげた人が作り上げた奇跡の場所

メテオラ  ギリシャ

ギリシャ中部、テッサリア平原とピンドス山脈の境
メテオラ
ギリシャ語で「中空に浮く」という意味を持つ
天を突く奇岩の頂に空を飛ぶように見える修道院
すべてが断崖絶壁上の奇岩の上に建つ。
地上のものとは思えない景観が待っている

もともとここには奇岩の群れがあった。
それは高さ20m~400m、600もの垂直にそびえたつ岩
約6000万年前に誕生したその場所はピニオス川が長い年月にわたり岩を削り堅い岩だけを残した結果、垂直の奇岩群が誕生したのである。
そこはまさしく地上の孤島といわれるほど、人が踏み入れない場所となったのである。

しかし、そんな断崖絶壁の向かっていたものがいた
「隠修士」
である。
隠修士とは神に近づくために世俗と離れ、すべてを神にささげたキリスト教の総称
世の中とのつながりを絶つためにあえて人が立ち入らないところに向かっていったのである。
実はこのような考えを持つのにはわけがあった。
キリスト教徒は現在大きく3つの派閥に分かれる。
「カトリック」「東方正教会」「プロテスタント」
この中でも東方正教会は社会との関係を断ち切り孤独の中で修行する事を重んじたのである。
こうして彼らは奇岩の上に立った。
より高い精神世界に到達するために。
そして、何も無い岩山の上に修道院を建て始めたのである。

が、何も無いしかも人が踏み入れられない場所にいかにして建造物を立てたのだろうか。
これに関しては諸説あり、
鉤のついた凧をあげて鉤を岩山にくくりつけ上り、ロープで建築物を引っ張りあげる方法
縄などを担ぎ、岩山を素手でよじ登り、建築物を引っ張り上げた方法
などなど、いくつかの説が存在するがいまだに建てた方法は分かっていない。
一つだけいえるのはすべてにおいて命をかけた作業であった
少しでも神に近づきたいという信念が彼らを動かしたのである。
こうして15~16世紀には24もの修道院が建てられた。
しかし、現在では6つの修道院しか活動していない。
残りはすべて廃墟となっているのである。

この修道院には数々の美術品が残っている。
それはギリシャ正教会の最高傑作ともいわれ、イコンやフレスコ画、写本などが残る。
すべてはビザンティン帝国滅亡後のポスト・ビザンティン様式で作られ重要な文化財となっているのである。
信仰心の厚い彼らが残した神にもっとも近い作品。


このように奇跡の景観を持つメテオラであるが、現在世界遺産になったことで大きな問題を抱えている。
それは、観光客の増加
もともと世俗を離れた修道士たちが修行する場として建設された。
しかし観光客が増加し世俗とのかかわりが強くなってしまった。
このため、修道士たちはここを離れ廃墟になりつつある。
有名になればなるほど危機に近づく世界遺産である。


メテオラは1988年、世界に同じと無い奇岩の驚異の造形として自然文化遺産に、ギリシャ正教会の思想が今でも残り天空に建つ奇跡の建物として世界文化遺産に登録された。
数少ない複合遺産となったのである。
少しでも神に近づきたいと願う修道士たちの命の結晶でもある。




始めて写真で見たときはびっくりしました。
世界にこんな場所があるのかと!!
人間にこんなすばらしいものが建てられるのか!?
ヘリコプターも飛行機も無い時代にどうやって建てたのか!?
疑問だらけの世界遺産です。
絶対、ここには行きます。
でもそれだけ世俗との関わりを持ってしまうある意味行きたくない世界遺産です。