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 【[雑学]ヨーロッパ

世界遺産雑学70--辺境の地に神を見た世界遺産Vol.3--
2000.12.30
 
世界遺産雑学70

辺境の地に神を見た世界遺産Vol.3

--海に浮かぶ驚異の建築--

かの文豪ヴィクトル・ユゴーがこうたたえた
「海上のピラミッド」と。
ここは海に浮かぶ小さな島。
干潮時しか島に渡れない不思議な場所。
大天使ミカエルの降臨した聖なる地


モン・サン・ミシェルとその湾  フランス



フランス、ノルマンディー地方
大西洋に面した場所にこのモン・サン・ミシェルがある。
砂地に浮いた円錐形の岩の山。
こんな辺境の地に教会が建てられたのである。
今では世界中で行きたい世界遺産の上位に入るほど神秘的な遺跡

こんなモン・サン・ミッシェルには伝説が残る
709年、当時のノルマンディー地方を統括していた大司教オベールはある夢を見た
大天使ミカエルが現れ岩山に聖堂を建てろと
しかし大司教オベールはこの夢を信じなかった。
だがオベールはこの夢を3度見たのである。
最後に大天使ミカエルはオベールの頭に手をのせ強く命じた。
そして夢から覚めたオベールはその額の感触から天使を信じ聖堂を建設したのである。
すると一夜にして驚くべきことが起こる。
陸続きだったモン・サン・ミシェルが生みに沈み孤島と変化し、皆を驚かせた。
それ以来ここは聖地となった。
現在呼ばれているモン・サン・ミッシェルとはフランス語で大天使ミカエル(フランス語名:サン・ミシェル)の山(モン)と名づけられたのである。

しかし、これは伝説。
実際にはもう少し昔に建設されたのではないかと言われている。
それは世俗を捨てた隠修士がこの海に囲まれた岩山に移り住んだのが最初ではないかと言われているのである。
昔は月に2度しか陸地が繋がらなかったため、世の中との交流を持たない彼らには絶好の場所であったの。


モン・サン・ミシェルは岩山の上に建てられた聖堂。
しかし、岩山に建てられたにもかかわらず中庭や回廊、食堂貴賓室など繊細なリブ構造を持ちアーチに囲まれた回廊を有するゴシック建築が存在する。
それこそ「ラ・メルヴェイユ」
別名驚異の建築。
平地も何も無い岩山でこれほどの空間を作り上げるにはまさに驚嘆する建築。
特に食堂には59もの窓が設置され、外光を取り入れる構造となっている。
また広い空間は司教の説教がくまなく行き渡るように設計されているのである。
しかも16年という短い工期で終わらせたという事実。
まさに驚異の建築である。
 
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しかし、こんな栄華を誇ったモン・サン・ミシェルであるがある時期において要塞・監獄へと変化するのである。
それこそ百年戦争。
フランス、イギリスが領土を争うために100年間続いた戦争のことで皆はジャンヌ・ダルクが活躍した戦争として記憶に残っているだろう。
この戦争でイギリスに近かったモン・サン・ミッシェルは要塞化を始める。
そして修道院は閉鎖。
軍が駐屯する場所となってしまったのである。
ただ、ここは干満の差が激しかったため船が近づくことが出来ずに一度も陥落する事は無かった。
その後、一度は修道院が復活したがナポレオンの時代に監獄として転用された。
それは逃げ出す事の出来ない海上の要塞であったため。
こうして修道士が戻ることが出来たのは200年後の1966年であった。

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そしてふたたび大聖堂としての復活を遂げたのである。


ただ、現在モン・サン・ミシェルは危機に陥っている。
それこそ、世界遺産に登録されたこと。
日本人が行きたい世界遺産ランキングでも1,2位を争う世界遺産。
それだけ神秘的でこの世のものとは思えないほどの不思議を抱えた世界遺産であることは間違いない。
が、その分観光客が絶え間なく訪れる世界遺産となってしまった。
日々人の波が押し寄せてくる。
神秘性が失われつつある。
また、もう一つ神秘性が失われたものがあった。
それは海に囲まれる事。
中世のころは月に2度しか島にわたれない場所であった。
しかし、1879年に観光客が増えたため島と陸をつなげてしまった。
このため年間300万人以上が訪れるようになったのだが海の中の道が潮の流れを変えた。
そして周辺には砂が堆積するようになったのである。
現在、年間2回、春と秋の満潮時にしか海に囲まれない世界遺産となってしまった。
海に沈まないモン・サン・ミッシェルとなってしまったのである。

このため、フランスはある改善方法に着手している。
それは道を無くす事。
防波堤のように続いている道を橋のようにして潮の流れを邪魔しない構造を計画している。
完成予定は2017年。
しかし、この保存は観光客の減少になるのではないかと一部の人が懸念している。
それは、橋に車が通れないようにするため。
観光客は陸から2km歩いて島に渡らなければならなくなるのである。
ただ、昔の人は歩いて渡っていたのであるから本来の姿に戻ると思えば、さらに海に沈んだモン・サン・ミシェルを見れるのであれば早く作りあげてほしいものである。



世界一行きたい世界遺産「モン・サン・ミシェル」
過酷な自然環境を乗り越えて完成させたものであり、数世紀にわたって作られた人々の熱意や技術の成果であることから1979年世界遺産に登録された。
今、人々はこの世界遺産を守るために日々観光客と戦っているのである。




というわけで、辺境の地に神を見た世界遺産3作はいかがでしたでしょうか?
辺境の地にあるというだけで観光客という問題は避けて通れないのかも知れません。
有名にすることが世界遺産じゃありません。
守るための世界遺産なのです。
ぜひともモン・サン・ミシェルの守るための改善策を見てみたいものです。
というか、出来るなら手伝いたい!!
世界遺産守りたいです。