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 【[雑学]ヨーロッパ

世界遺産雑学73--特殊な世界遺産Vol.10--
2000.12.30
 
世界遺産雑学73

特殊な世界遺産Vol.10
「建築、水運学」

--ジブラルタル海峡を通らない交易の方法--

なぜここに巨大な建築を作ったのだろうか?
それは360kmにも及ぶ大工事
フランスの威信をかけて作られたものであった。
これこそ運河

ミディ運河  フランス

フランス南部、ミディ=ピレネー
ここにフランス最大の建築ミディ運河がある。
トゥールーズから地中海に隣接するトー湖までの240kmを結ぶ。
また、支流をあわせると360kmにも及んでいる。
地中海と大西洋を結ぶ巨大な運河である。

しかし、ここで疑問に思う人もいるのではないでしょか。
実際、地中海と大西洋は海でつながれていることを。
地図を見てほしい。
スペインとモロッコの間にジブラルタル海峡がある。
ここを通り抜ければ地中海と大西洋の交易が出来るのである。
さらにスペインという国はそんなに大きい国ではない。
スエズ運河やパナマ運河のようにアフリカ大陸や南アメリカ大陸を大回りするより運河を通ったほうが早いが、スペインを回るだけであればそんなに時間はかからないのである。
それも360kmもの運河を作り、巨大な資産を使う必要は無かったように思える。
が、ここにはフランスの威信がかかっていたのである。

時代は大航海より少し後
地中海と大西洋の交易はある国に独占されていた
それはスペイン
地中海と大西洋をつなぐジブラルタル海峡を占領していたためだ。
スペインはジブラルタル海峡を通るすべての船に多額な通行料を取っていた。
このため、スペインは巨万の富を手にしたのである。
これにあせったのはフランス。
ただでさえ新大陸の利権をスペインに取られているのに地中海世界の利権まで手にされてはフランスの発展が見込めなかった。
しかし、フランスの船がジブラルタル海峡を通れば通行料が発生してしまう。
では、ジブラルタル海峡を通らずに大西洋と地中海を行き来するにはどうすればよいのか?

そこで目を付けられたのがフランスのガロンヌ川だ。
トゥールーズからボルドーまでをつなぐ川。
トゥールーズは地中海から比較的近い場所にあり、ここを運河でつなげば大西洋と地中海が繋がることを、見出したのである。
こうして、フランスは運河の建築を始める。
それは、太陽王で知られるルイ14世の時代であった。
建設を担当したのはピエール・ポール・リケ。
地元ランドック州の塩税徴収人で財をなした人物である。
ピエールは建築の指揮をする間、ミディ運河のことだけを考えるため運河建設予定のワインセラーを丸ごと買い取ってそこに住んだと言われている。
それだけ、ミディ運河にかけていたのである。
このミディ運河の資金はフランス、ランドック州だけでなく、ピエールの全財産も使われた。
こうして、ミディ運河は49の水路橋、103の水門を要する巨大な運河となったのである。
それは、産業革命の最先端の技術が投入された。
また、ピエールは運河の景観にもこだわった。
運河沿いには4万5000本にもわたる木が植えられ、全長をつなぐ遊歩道までもが作られたのである。
運河をいかに自然と溶け込むようにするかを追求した結果であった。



ミディ運河は運河建設の最高傑作として、またその後の運河建設に影響を与えたとして1996年世界遺産に登録された。
また、自然と運河が溶け込む美しいデザインも評価の対象となったのである。
この運河はジブラルタル海峡を独占したスペインに対抗する手段であった。



久しぶりの特殊な世界遺産紹介でした。
今回は運河です。
距離で考えるとざっと東京=名古屋間ぐらいに匹敵します。
それだけの距離に水を引いてくるという大作業。
ちょっと信じられません。
それほど、フランスはこの事業に威信をかけていたのではないでしょうか。