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 【[雑学]アジア

世界遺産雑学78--これからの日本の世界遺産候補--
2000.12.30
 
世界遺産雑学78

--これからの日本の世界遺産候補--

2007年1月23日 (注:執筆時07年1月8日)
この日、次の日本の世界遺産候補が決まる
現在の世界遺産暫定リストに4件の候補がある。
これが一気に十数件になるのである。


日本の世界遺産暫定リストとその候補

まず、世界遺産になるためにはどうしても通らなければならない道がある。
それは暫定リストに登録される事。
世界遺産に登録される際に世界遺産委員会で承認が必要であるがその承認は暫定リストの中にある自国が推薦した物件に限られている。
このため、世界遺産になるためには暫定リストに入る必要がある。
現在の日本の世界文化遺産のすべてはこの暫定リストに入った後に登録されているのである。

すなわち、暫定リストに入っているものの中で次に世界遺産になるものが分かるのである。
現在、日本の暫定リストに登録されているのは4件

浄土思想を基調とする文化的景観(平泉) 岩手県
石見銀山遺跡とその文化的景観  島根県
古都鎌倉の寺院・神社ほか  神奈川県
彦根城  滋賀県

である。
このうち、今年2007年石見銀山が、2008年平泉が世界遺産委員会への推薦が決定している。
基本的によほどのことが無い限り推薦が登録となることが確定しているため近いうちに日本の世界遺産が2件増える事となっている。


そして今回、文化庁は現在日本の暫定リストを増やすため昨年の秋に暫定リストへの公募を行なった。
世界遺産に登録される2件がなくなった場合新たに世界遺産になる暫定リストが必要であったためである。
これにより全国自治体がこの公募に対して24件もの遺跡を暫定リストに掲載する事を希望した。

青森県の縄文遺跡群  青森県
ストーンサークル  秋田県
出羽三山と最上川が織りなす文化的景観  山形県
富岡製糸場と絹産業遺跡群  群馬県
善光寺  長野県
松本城  長野県
妻籠宿と中山道  長野県
富士山  静岡県 山梨県
金と銀の島、佐渡  新潟県
飛騨高山の町並みと屋台  岐阜県
近世高岡の文化遺跡群  富山県
城下町金沢の文化遺跡群と文化的景観 石川県
霊峰白山と山麓の文化的景観  石川県 福井県 岐阜県
若狭の社寺建造物群と文化的景観  福井県
飛鳥・藤原-古代日本の宮都と遺跡群  奈良県
三徳山  鳥取県
錦帯橋と岩国の町割  山口県
萩城・城下町および明治維新関連遺跡群  山口県
四国八十八ヶ所霊場と遍路道  四国全県
沖ノ島と関連遺跡群  福岡県
長崎の教会群とキリスト教の関連遺産  長崎県
宇佐・国東八幡文化遺産  大分県
九州・山口の近代化産業遺跡群  山口・福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島
竹富島・波照間島の文化的景観  沖縄県

以上の24件である。
中をよく見ていただくと富士山や四国のお遍路さんなど知っているものもあれば、ストーンサークルや近代遺産など日本人が特に知らないものまである。
しかし、すべてが世界遺産もしくは暫定リストに入れるわけではない。
文化庁は2007年1月23日にこの中で一桁程度まで絞込みユネスコへ暫定リストの申請を行なう予定となっている。
要するに半分以上は世界遺産どころかその前の前段階にも入れないのである。
さらに世界遺産への困難は続く。
それは、暫定リストに登録されていても世界遺産に登録される可能性が100%でないためである。

この例が現在の暫定リスト鎌倉と彦根城である。
じつはこの2つの暫定リストはもうかれこれ10年以上も暫定リストのままである。
逆に平泉と石見銀山は2001年暫定リストに登録されてから6年のうちに世界遺産になることになる。
では、なぜこんな事が起こってしまったのであろうか?
それは特異性。
世界遺産は「世界的に見て独自性があり、かつ普遍的価値を持つ遺産」であるかが重要になってくる。
要するに同じようなものは一方が世界遺産に登録されていればもう片方は世界遺産になれないのである。

では、詳しく現在の暫定リストから詳しくこの意味を説明してみたいと思う。
まず、世界遺産に登録予定の平泉と石見銀山。
平泉は平安時代の末期に作られ奥州藤原氏が建てた仏教寺院。
古代から中世への過渡期における地方文化の傑出した遺産。
また、浄土式庭園としては日本最大の庭園を要する。
簡単な言い方をすると、日本の中央ではなく地方で発展した文化でその最高傑作ということである。
実はこの類の日本の世界遺産はまだ無い。
京都、奈良は中央で発展した文化であり、平安時代の地方の文化はいまだに世界遺産となっていないためである。
このため、世界遺産の登録が決定した。
石見銀山はなじみが無いとおもうが、実は17世紀に世界の1/3もの銀を産出した場所。
飛躍的な発展を遂げた銀鉱山の様子が極めて良好な状態で保存されており、世界の大航海時代における石見銀山の役割が世界史の上でも重要であった。
産業遺産として世界に多大な影響をもった遺跡として世界遺産への推薦が決まったのである。

逆に、世界遺産に推薦されない鎌倉と彦根城であるが
まず鎌倉は世界の人から見て鎌倉と京都・奈良の違いがどうしても分からないのである。
両方とも計画都市で鎌倉のほうが規模が小さく、鎌倉の大仏は奈良の大仏よりも小さいため、鎌倉は京都・奈良より劣って見えるのである。
このため、先に世界遺産に登録されている京都・奈良があるため特異性が見つからず世界遺産の推薦が決まっていない。
同様に彦根城も現在世界遺産に登録されている姫路城よりも規模が小さい。
世界の人から見れば日本のお城はすべて同じように見え、姫路城があるからもう城は必要ないだろうと思われている。
もし、彦根城が姫路城と違う特異性をみせられれば世界遺産に推薦されることだろう。


この現状をみてみると暫定リスト候補の中でも世界遺産になるのが難しいのが見えてくる。
例えば、松本城。
彦根城が暫定リストにいるのに城がもう一つ暫定リストになるのはとても厳しい。
また、金と銀の佐渡は石見銀山が世界遺産となるため暫定リストに登録されたとしても世界遺産になるのには難しいように思える。

また、個人的に難しいと思われるのは富士山。
当初は山であるため自然遺産での登録を目指した。
しかし、ゴミ捨て場のようになっている富士山は自然遺産にふさわしくないという理由で断念している経緯がある。
(実際は、富士山と同じような山が世界中で沢山あるため特異性が見つからなかったためとも言われている)
このため、日本の歴史とともに生きてきた富士山は日本人が数多くの作品に残し、日本人の心のよりどころとしている場所として文化遺産に登録しようとしているのである。
世界中見ても宗教の聖地や信仰の場所は世界遺産となってきたが宗教と関係の無い場所が世界遺産となった例がいまだに無い。
こう考えると世界遺産に登録されるのは難しいと考えられる。


そして、この候補を見た中で一番悲しかったのが竹富島・波照間島が暫定リスト候補に入った事。
あんなのどかな場所は確かに自然と人類が生み出した遺産かもしれない。
しかし、世界遺産に登録されるとそこは一気に観光客だらけになる。
のどかな風景が何処へやら。。
観光化されるのがいやで世界遺産に登録される条件を持った伊勢神宮は世界遺産になることを断っているというのに。

日本はいま、利益のために世界遺産になろうとしているのである。


2007年1月23日
この日、日本の世界遺産への未来が決まる日でもある。
文化庁がどのような決断をするか見守りたい。





年が変わって最初の雑学でした。
今回は日本の未来の世界遺産!!
ちょっと難しい話かもしれないですね。
正直に言うと歴史や特異性が無いものが世界遺産とはなってほしくない。
日本人は世界遺産=地域にお金が入ってくると錯覚しているため。
世界遺産は世界に誇れるものだからこそ守らなければならないものだからこそなってほしい。

もし富士山が世界遺産になったら入山禁止。そんな処置をとってもらいたいです。