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 【[雑学]ヨーロッパ

世界遺産雑学83--特殊な世界遺産Vol.13--
2000.12.30
 
世界遺産雑学83

特殊な世界遺産Vol.13
「鉄、産業」

--産業史に残る世界最高峰の工場--

まるで巨大な要塞
こう例えられた場所がここにはあった。
そこは巨大な工場。
世界の工場に多大な影響を与えた奇蹟の工場

フェルクリンゲンの製鉄所  ドイツ

ドイツ、ライン川へと繋がるモゼール川の支流
この川沿いにフェルクリンゲンの街がある。
フェルクリンゲンの街はドイツの中でも発展した街ではなかった。
それはドイツの東南のはずれに位置していたためでもあった。
しかし、こんな街が一躍産業の表舞台に立ってしまった。
このため人口が急増。
4倍にまでふくれあがってしまった。
原因は製鉄所の創設である。

19世紀後半。
ドイツは新たなる息吹が芽吹いていた。
ドイツ帝国の成立である
そしてドイツ帝国を指揮したのが鉄の宰相「ビスマルク」
彼はドイツを富国強兵へと導く。
軍事国家を築きあげたのである。
このため銃、大砲や戦艦など兵器がどんどん造られた。
こうして鉄が重要になったためフェルクリンゲンに製鉄所が設けられたのである。

当初この製鉄所はあまりうまくいかなかった。
石炭が取れる良い立地条件にも関わらず売り上げが上がらなかったのである。
こうしてフェルクリンゲンは発展しないまま終わっていくのかと思われた。
しかし、こんな状態の製鉄所に夢を見たものがいた
実業家「カール・レヒリング」
である。
彼はこの製鉄所を買収。
その後、彼が夢みた世界が実現のものとなったのである。

カールが経営者になってから、6基の溶鉱炉が設置された。
これにより一日に1000トンもの鉄が生み出されるようになる。
そしてそれらは第一次大戦への武器へと変化していくのである。
また、この製鉄所は様々な生産設備を投入していく。
巨大なガス送風機:溶鉱炉で発生したガスをそのまま燃料として稼働させる送風設備
連続焼結装置:粉末状の鉱石を燃料とともに高炉へ送る設備
ゴンドラ式トロッコ:材量をゴンドラのように上から運ぶ装置
などなど、製鉄に必要な革新的な技術が開発されたのである。
これらのすべてはその後世界の製鉄所で採用された。
そして現在の世の中でもこの技術を受け継いでいるのである。

そんな世界をリードし続けた製鉄所は閉鎖という現実が待っていた。
1970年代のオイルショックである。
石油が手に入らず、原価が高騰。
経営不振となり1986年に生産を完全に停止したのである。
しかし、設備は当時のまま保存されヨーロッパ史に関する貴重な資料として保存されている。


フェルクリンゲンの製鉄所は製鉄業に多大な影響を与えた場所としてまた産業史に大きく貢献した場所として1996年世界遺産に登録された。
製鉄所閉鎖後8年後の快挙でもあった。




製鉄業の世界遺産
すっごく特殊ですよね。
建築の世界遺産は何となく分かりますが、工業の世界遺産。
ここはただ工場があるだけ。
行っても何が世界遺産なのか疑問になる場所。
しかし、産業史をリードした歴史があるのです。