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 【[雑学]ヨーロッパ

世界遺産雑学94--世界の果てに住む者達--
2000.12.30
 
 世界遺産雑学94

--世界の果てに住む者達--

ラップランド
ここは世界の中でもさらに辺境の地
厳しい自然と環境が牙をむく
しかし、人間はここを永遠の住処としたのである。


サーメ人地域   スウェーデン


ヨーロッパ大陸最北端、スカンジナビア半島。
その中でも北極圏に位置する場所こそ「ラップランド」である。
ラップランドとはスウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ロシアの4カ国にまたがる場所を指す。
それは、ヨーロッパの人が僻遠の地という意味をこめてラップと呼んだためである。
このためここに住む者達をラップ人と呼ばれる。
しかし、彼らは原住民の言葉である「サーメ」と自らを称するのである。


このラップランドには様々な自然が残る。
氷河が削って出来たU字の渓谷
凍った地面が徐々に削られて出来た丘など
氷河時代後期の地形がそのまま現在に保存されている。
また、
未開の大湿原
標高2114mを筆頭とする峰
などの雄大な自然がそのまま手つかずの状態で残っているのである。

それもそのはず、ここは北極圏に位置する。
ほとんどが雪と氷で閉ざされた場所。
人が入れるのはわずかな夏の間。
それ以外は自然の猛威が押し寄せるのである。
こうして人が入ってこないために動物たちの楽園ともなっている。
ヨーロッパオオライチョウ、イヌワシ、ユーラシアオオヤマネコなどなど
寒冷地を好んで住む動植物が多く住み着いているのであった。

しかし、こんな厳しい環境のラップランドにも約5000年前に人が住むようになる。
彼らはこの極寒の地に適応するために独自の文化を発展させる。
カラフルな厚手の民族衣装などヨーロッパとは一線違った文化を歩んで行ったのであった。
また、彼らはこの厳しい自然の中で食料を調達する方法を考えた。
それこそ、トナカイの飼育である。
トナカイは寒さを乗り越える能力があった。
さらにトナカイの肉には貴重なタンパク源が豊富に含まれていたのである。
しかし、トナカイの飼育にも食料が必要とされた。
このためラップ人は少ない夏をトナカイの放牧に徹した。
緑があるうちにたくさんの食料を食べさせて、そのトナカイを冬の食料源としたのであった。
また、狩猟も重要な食料源の一つになった。

実は、こんなラップ人の生活がいま脅かされている。
文明の発展である。
彼らはこんな極寒の地に住まなくても都会にでて普通の生活をし始めた。
また、遊牧にもソリからスノーモービルへとどんどん機械化が始まってしまったのである。
サーメの文化が徐々に色あせてしまっている。
しかし、現在でも200人がトナカイと飼育する生活を送っているのである。


ラップランドにあるサーメ人地域は1996年、氷河期後期の自然をそのまま残す場所として世界自然遺産に、サーメ人の文化が今も継承されているとして世界文化遺産に登録され、ヨーロッパで数少ない複合遺産として登録された。
ここには今も変わらない自然と人の温かさが残っているのである。



行ってみたい場所の一つです。
いまだに辺境の地は見たことがありません。
きっと日本では考えられないほどの自然が待っていることでしょう。
でも、それだけ行くのがとても大変な場所。
いつか見に行きます。