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 【[雑学]ヨーロッパ

世界遺産雑学97--特殊な世界遺産Vol.16--
2000.12.30
 
世界遺産雑学97

特殊な世界遺産Vol.16
「製鉄、鉄橋」

--世界の工場を支えた場所--

レンガ造りの工場地帯
この場所は世界の産業革命をリードし続けた場所
また、世界で初めてこの場所に造られた物があった
「鉄橋」


アイアンブリッジ渓谷  イギリス

トロイアの王子パリスは一人の女性に恋をする。
相手は同盟を結んだばかりのスパルタの王妃ヘレネ。
他国の王妃への恋。
それは許されない恋であった。
このためパリスはある事件をおこす。
王妃ヘレネを強奪するのであった。
そしてヘレネを連れたままトロイアに戻った。
これに怒ったのがスパルタの王メネラーオス。
王妃を奪われた彼は兄であるミュケナイ王アガメムノンに助けを求める。
そして、2つの国は協力しトロイアを攻めるのであった。
しかし、10年の月日が流れてもトロイアを倒すことが出来なかった。
そこで一計を案じる。
彼らは突然すべての兵を撤退させたのであった。
巨大な木馬だけを残して。
その時トロイアは敵の行動に勝利を確信していた。
そして、戦利品として巨大な木馬を城の中に引き入れたのである。
その夜、突然として木馬の中から敵兵が現れた。
こうして、あっという間にトロイアの街は炎上する。
結果、滅亡に追いやられたのであった。

これがホメロスの書いた叙事詩「イリアス」
紀元前800年頃の作品とされ現代の世の中まで語りつがれたのである。
19世紀に入り、この物語は空想もしくは伝説の話しだと考えられていた。
それもそのはず、物語が2600年も前に書かれていたためであった。
しかし、一人の男はこの物語は実話の話、歴史書だと信じて疑わない者がいた。
ハインリヒ・シュリーマンである。
イングランド中部。
バーミンガムから北西に30km離れた場所にアイアンブリッジ渓谷がある。
セヴァーン川沿いに並ぶ工場群
ここは世界の工場と呼ばれたイギリスの発展を支えた場所であった。

18世紀後半、世界に新たな革命が起こった。
「産業革命」である。
産業革命はイギリスで始まった革命。
産業革命の始まりは紡績機械の発展からであった。
水力などの力を使って大量の織物を造ったのがきっかけである。
その後、技術は蒸気機関の発展を導く。
蒸気機関の完成とともにワットによりさらなる改良に伴い飛躍的に産業が発展したのである。
それはその後世界のお手本となり、世界中で産業の発展がもたらされたのであった。

そんな産業革命を影で支えた工場があった。
それこそアイアンブリッジ渓谷である。
ここはイギリスの機械に使用される鉄を生み出した場所。
産業革命を飛躍的に発展させた証。

産業革命に必要な物は何だろうか?
それは鉄である。
紡績機、蒸気機関、鉄道、船、などなど。
すべての機関に置いて鉄は必須だった。
しかし、当時の鉄は品質があまり良くなく大量生産が出来なかったのである。
そこで、1709年イギリスの実業家エイブラハム・ダービー1世がある画期的な発明をする。
石炭コークスから製鉄を生み出す熔解方法。
この発明により当時の鉄よりもさらに品質の良い鉄が生み出されるようになる。
さらに彼は巨大な溶解炉を建設する。
これにより、大量の鉄が生産出来るようになったのであった。
そして、イギリス全土へ鉄が出荷され、産業革命を後押ししたのである。

こうして、エイブラハム一族は巨万の富を得ることとなった。
しかし彼はこの富を使って工場のさらなる発展を望む。
労働者の住居と祈りの場の聖堂。
鋳造所や倉庫など。
これらにより生産能力を高めようとしたのであった。
また、さらに輸送能力を上げようと造った物があった。
「アイアンブリッジ」である。
セヴァーン川に橋を築くことで効率的に鉄を運びだそうとしたのであった。
しかし、当初この橋はレンガと石で建造される予定で建設が始まった。
が、設計者がどうしても鉄で造りたいという熱心な説得により鉄での建設となったのである。
400tの鉄が使用され、幅7m、長さ60m
世界で初めての鉄を使った橋が誕生したのであった。
こうして今でも鉄橋建築に大きく影響を与える場所となった。



アイアンブリッジ渓谷は製鉄法、溶解炉など製鉄業に多大な影響を与え、世界をリードし続けた証として1986年世界遺産に登録された。
まさしく、ここには産業革命の立役者となった事実が残っているのである。



工場の世界遺産!
それも結構あります。
紡績、製鉄、採掘などなど。
こう考えると世界遺産って多種多様。
いろいろありすぎで紹介するのが大変です。