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 【[雑学]ヨーロッパ

世界遺産雑学116--地中海の空に映える白--
2000.12.30
 
世界遺産雑学116

--地中海の空に映える白--

真っ青な空
真っ白な石灰
そんなコントラストに映えた街が存在する
とんがり屋根の簡素な家が立ち並ぶ街が


アルベロベッロのトゥルッリ  イタリア

イタリア南部。
ブーツ型をしたイタリアのかかと部分。
この場所には昔から特徴的な建物が建てられた。
それこそトゥルッリ。
しかし現在では多くが取り壊され各地に少しずつ点在しているだけになってしまった。
その中でもアルベロベッロはこのトゥルッリが数多く残る。
伝統的な風景がここに残る。

そもそもトゥルッリとは円錐形の特徴的な建物。
壁に石を積み上げてそこに石灰を塗る。
その後壁の上に平らな石を積み重ね円錐状の屋根を建てる。
ただそれだけ。
それを複数つなげて家を構成するというものだ。
簡単ですぐ建てられる家がこの地方には作られた。
名前の由来もイタリア語の「部屋一つに屋根一つ」を意味するトゥルッロを複数形にしたトゥルッリとなっている。

しかし、こんな簡素の造りのトゥルッリは実は快適な生活を過ごせる家であった。
基本的には一つのトゥルッロが4つをつなげて家にしている。
それぞれの空間には間切りというものはなくすべてカーテンのみで区切られている。
また防音効果もすごく壁はすべて二重構造となっており厚さが80cm~2mにもなる。
隣の家の音はほとんど聞こえない。
さらにトゥルッリは水をためるという機能も備えていた。
4つのトゥルッロは正方形状に並べられていてその中心からは地下へと直結させている。
屋根に降った水をそのまま地下へ貯蔵するシステムがある。
これはこの地方特有の気候にあった。
乾燥している土地であるため水の確保ができなかったのである。
このため、水を効率よく集める構造が採用されたのであった。

では、なぜイタリア南部にはこのような構造の家が建てられたのであろうか。
それは領主の欲望のためである。
トゥルッリが建てられたようになったのは16世紀半ば。
当時この地方を支配していたのはナポリ王国。
このナポリ王国は領土をそれぞれの領主に任せ、家の数で税金を納めさせるというシステムをとっていた。
しかし、このアルベロベッロ周辺を統治していた領主が卑しい人で税金を払うことを嫌がっていた。
でも、守らなければ自分が領主から外れてしまう。
いかにお金を払わないようにするか。
そこで考えられたのがトゥルッリである。
ナポリ王国の家の数だけ税金を納めるという法律を逆手に取る方法。
家がなければいいんだという発想である。
トゥルッリは作りやすい構造をしているが反対にいえば壊しやすい建物でもある。
領主はナポリの査察官が来た際にはトゥルッリをこわしてこれは家ではないと言い張ったのである。
人の醜い考えからこの素晴らしい風景が誕生した瞬間であった。

現在、「美しい樹」という意味をもつアルベロベッロには1000軒にも上るトゥルッリが残されている。
そこにはもちろん人が住み、過去の営みがそのまま保存されている奇跡の場所。
アドリア海に近く、青い空に石灰の白さ。
とんがり屋根に石畳の道。
まさしくここは別の世界に迷い込んだかと錯覚するような場所である。


アルベロベッロに残るトゥルッリは南イタリアの独特な建造物の象徴であり、現在でも人が住み独特な住居形態を伝える場所として1996年世界遺産に登録された。
16世紀からこの街は何も変わっていないのである。



ここ行ってみたいな~。
きっと不思議な感じがするんだと思います。
別の世界に迷い込んだんじゃないかって。
それだけ特徴的な建物。
あの石灰の白を見てみたい。