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 【[雑学]アメリカ・カナダ

世界遺産雑学118--赤い川が削る巨大な峡谷--
2000.12.30
 
世界遺産雑学118

--赤い川が削る巨大な峡谷--


見渡すところはすべて巨大な谷
下を流れるのが赤い川
ここは地球の偶然が重なりあって生まれた場所
地球の鼓動が作り上げた20億年もの足跡


グランド・キャニオン国立公園  アメリカ

アメリカ合衆国南西部、アリゾナ州。
ここには見る者を疑わせる信じられない風景が存在する。
それは450kmにもわたる峡谷。
世界最大規模の峡谷である。
あまりにも深く、余りにも大きいことから見る者がこう叫んだ。
「なんて巨大な峡谷なんだろう(グランド・キャニオン)」と。
それが叫んだ言葉がそのまま名前となったのである。
この見る者を驚愕させるグランド・キャニオンは地球生成過程のさまざまなものを見せる場所でもあった。
生物がいなかったころの時代までを表しているのである。

このグランド・キャニオンができたのは実は偶然の出来事であった。
それは3つの奇跡が重なり合ってできた産物。
どれか一つでも欠けていたらグランド・キャニオンは存在しなかったのである。
まず、一つ目にあげられるのはこの場所の地盤がものすごく軟らかかったこと。
実は地球のほとんどの岩石はやわらかくない。
というのも火山でできるのはほとんどが花崗岩であり、その花崗岩が固いためである。
しかし、グランド・キャニオンの岩石は実は石灰でできている。
この石灰というのは世界のあちこちで大量に見つかる岩石であるがこの石灰が生まれる理由は一つしかない。
サンゴである。
サンゴは海の浅い部分に生息し、生命がなくなると固く硬化し石灰となるのである。
この事実からグランド・キャニオンは昔海であったことを証明している。
それも数億年かけて隆起、沈降、体積を繰り返し1000m以上も堆積したのであった。
こうしてグランド・キャニオンの大地にはやわらかな台地が出来上がった。

二つ目の理由として川の存在がある。
このグランド・キャニオンに残る川はコロラド川。
グランド・キャニオンの発見者、スペイン人が赤茶けた激流をみてスペイン語「リオ・コロラド川」(赤い川)と名付けたのが名前の由来である。
普通、川は透明な色をしているのが普通である。
しかし、コロラド川は違った。
コロラド川は普通の川と違ってスタートから河口まで3184mの高低差が存在する。
さらに水量が豊富ときていた。
この2つの要素から川は激流と化した。
絶えずコロラド川は轟音を流しながら流れたのである。
これにより川は大量の大地を削ることとなる。
一日で100tの土砂を超える時も存在した。
一秒間でダンプカー一台分に相当する量。
それほどまでにコロラド川は激しい流れですべてを飲み込んでいったのである。
この土砂が赤いために川も赤く変色。
赤い川という異名をつけられたのであった。
このコロラド川により台地が浸食されつづけグランド・キャニオンの形成されたのであった。

三つ目の理由として、侵食と隆起のバランスにある。
コロラド川がグランド・キャニオンを侵食し続けるととうなるか。
それはどんどん川が下に行くためいつの間にか高低差がなくなり、侵食がなくなるか湖が形成されてしまうのである。
しかし、このグランド・キャニオンという場所はさらに特異な場所であった。
火山活動の影響からか少しずつではあるが台地が隆起しているのである。
このためコロラド川が絶えず上昇していくのであった。
が、この隆起だけではグランド・キャニオンは形成されない。
隆起が速いスピードで起こるとどのようなことが起こるか。
それはコロラド川のスタート地点より川が高い位置に来てしまい、川がグランド・キャニオンを流れなくなり回り道をし始めることを意味している。
では、なぜこのグランド・キャニオンは生まれたのか。
これは川の侵食のスピードの方が隆起よりも少しだけ早かったのである。
川の高低差がどんどん下がりながらそれに見合っただけの隆起を繰り返す。
このような偶然がなければグランド・キャニオンは作られなかったのである。
それも3つの条件が見事に重ならなければ。
まさしく、自然が作り出した奇跡の景観なのである。

このように形成されたグランド・キャニオンには現在地球の生成過程や多様な動植物が見て取れる。
まずは、地層。
太古から堆積した大地がコロラド川によって削られたため現在目に見えている部分すべてが過去の産物なのである。
一番現在と近い地層で最上層の2億5000年前。
一番古い地層で最下層の20億年前。
それは地球学上の歴史として4つに分けられるうちの最も古い先カンブリア時代と古生代時代に匹敵する。
最も新しい中生代と新生代の地層は浸食されすべてが残っていない。
ここまで古い地層がみられるのは世界でも稀。
古生代に代表される三葉虫をはじめ、植物、爬虫類などたくさんの化石が見つかっている。
地球が歩んできた生成過程と生物の進化過程を知る格好の場所となっているのである。
また、このグランド・キャニオンは様々な動植物も生息している。
それはグランド・キャニオンが1700mもの高低差にわたっているため。
上と下では環境が全くと言っていいほど違っているのである。
このため、カナダからメキシコにかけて生息するほとんどの動植物がここには存在する。
また、頂上部分では寒帯に生息する動植物や谷底部分には砂漠地帯に生きる動植物が生息する。
不毛な土地に一見見えるのであるがここは生物の楽園であった。



奇跡の場所、グランド・キャニオンはその特異な自然美が雄大であり、異なる気候帯の動植物が生息し、地球の歴史を知る地質学上貴重な場所であることから1979年世界遺産に登録された。
ここは今でも侵食という進化を続ける世界遺産である。




ここであとがきですが、語らなければならないことがあります。
アメリカ合衆国は今後世界遺産の増えない国となっています。
現在18個の世界遺産がありますが1995年以降一つも増えていないのです。
もちろんアメリカにはまだまだ世界遺産に登録されるべき遺産はたくさんあります。
それは「政治的理由」により。
1995年、アメリカ合衆国は突然ユネスコを脱退いたしました。
それは戦争を起こすためです。
自分たちの優位性を保つために、利益のために、彼らは今でも戦争を起こしています。
このため、文化・教育・科学などを守ってく機関ユネスコは戦争を起こすと文化や教育を侵害するものだとして反対していました。
そして合衆国脱退という事実が生まれたのです。
世界遺産はユネスコに加入しているのが大条件。
このため、アメリカが戦争をやめない限りアメリカの世界遺産は増えないのです。
世界遺産とは人類が守らなければいけないもの。
政治的理由によって守れないという事実があってはいけないと思っています。
ミャンマーに残るパガンも同じ。
ミャンマーが軍事国家のため世界が国として認めていないからです。

今後、戦争がない平和な世界が訪れることを祈るのみです。
そして、何が起きても人類が残したものを後世に残せるシステムを作っていきたいです。