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 【[雑学]ヨーロッパ

世界遺産雑学122--1700年眠り続けた火山の街--
2000.12.30
 
世界遺産雑学122

--1700年眠り続けた火山の街--

そこにはただ何もない場所であった
後ろには巨大な火山を抱く場所
そんな場所から古代ローマの街がみつかる
火山によって1700年の眠りから覚めた場所


ポンペイ、エルコラーノ、トッレ・アヌンツィアータの考古地区  イタリア

イタリア、ナポリ湾
北には一大王国を築いたナポリ、南には世界一美しい海岸といわれるアマルフィー海岸がある。
そんな中場所に囲まれた山。
「ヴェスヴィオ山」
ナポリの街並みに溶け込んでいるこの山は草原が生い茂り風光明媚な場所。
悠然とそびえるこの山は今も噴火を続ける火山である。
そんな火山が2000年前に人類に牙をむいた。
たくさんの住民がなくなったのである。
以来この場所は人がよりつかない場所となった。
その後、1700年間この場所は忘れ去られたのである。
一本の大理石の発見を待つまでは。

ポンペイに街ができ始めたのは紀元前。
ブドウやオリーブの栽培により町が発展し始めた。
中には栽培により財をなした農園主の豪華な別荘が立ち並ぶ場所も存在した。
街の人口は1万2000人をこえ、当時の街としては大きい街となったのであった。
人々は平和に暮らし、安定した生活をおくっていたのである。
しかし、突然彼らの生活が終わりを告げる。
すべてを無にする出来事
西暦79年8月24日午後1時
突然の大音響とともにヴェスヴィオ火山が噴火を始めた。
山の上からは真っ赤な溶岩。
空には暗黒の火山灰。
街は突如として逃げ惑う人の波となった。
彼らは噴火の爆発がもたらす溶岩の雨から必死に逃げたのであった。
しかし、彼らに待っていたものは死。
火山ガスが大量に街に流れ込みほとんどの者が窒息して亡くなった。
その後、この街には大量の火山灰が降り注ぎ街をすべて飲み込み、真っ暗な地中へとすべては封印されたのである。
こうして平和な町は地中の中へと消えていった。

そして1700年の歳月が流れ、とうとうこの街は再び日の光を浴びることとなる。
18世紀、ポンペイの隣町エルコラーノで一本の大理石が発見されたことにはじまる。
当時この一帯は根の深い草原の地帯であった。
そんな場所から発見された大理石。
その報告を聞いたナポリ王カルロス3世はこの地域の発掘を指示。
こうしてエルコラーノやポンペイから古代ローマの都市が発見されるのであった。
とうとう火山灰に沈んだ街が再び地上に姿を現した瞬間であった。

発掘が進むと、人々はこの街のすごさに驚く。
区画された街。
舗装された道路。
織物、金細工、居酒屋、パン屋、プールや体育館すべてがこの街に残っていたのである。
現代の街と何の遜色もない街。
ここは、火山灰に埋まったため1700年間の歳月が過ぎたにも関わらず何の風化もされずに残っているのであった。
古代ローマの街が現代に姿を現し、一気に世界史に影響を与えたのであった。
中にはオリーブなどで財をなした農園主の豪邸もあった。
そこにはきれいな中庭、完璧に残された壁画すべてがそのまま残っている。
特に壁画は古代ローマ時代に描かれた神話を題材にした構成。
ヘレニズム文化を色濃く残した壁画であった。
まさにこの場所にはローマ時代にタイムスリップしたかと思う場所。
正確には遺跡が現代にタイムスリップした場所なのである。

しかし、この場所は火山で人々が逃げまとった場所。
実はそんな跡がこの場所から発見されている。
このポンペイの発掘調査で一つだけほかの発掘とおかしいところがあった。
大体の家の隅を発掘最中に空洞が見つかるのである。
何があるわけではないが何やら複雑な空洞。
最初はこの空洞が何か分かっていなかった。
しかし、これを何かの跡だと考える研究者が出てきた。
このため、空洞の形状を知るために空洞に石膏を流してそれを掘り起こしてみた。
するとびっくりする形が姿を現した。
その形こそ「人間」
おびただしい石膏の人間が姿を現したのである。
これは逃げ惑う人が部屋の隅に身をひそめた跡、火山ガスにより亡くなりその上に火山灰が降り注いだ。
それが長年の歳月をかけ、すべてが地中で分解される。
これにより、空洞だけが残ったのであった。
彼らの悲痛な叫びが石膏から現代に伝えている。
それは表情までもが読み取れる正確な空洞であった。

このように現代に現れたローマの街だが、今危機に陥っている。
それは日の光を浴びていること。
300年前から発掘が続いているポンペイ。
そこは2000年前の遺跡が姿を現しているのだが、日の光を浴びることにより劣化が始ってしまった。
土の中に保管されていたため昔の姿が拝めたのであるが、それが逆に保存に適していないのである。
このため、ポンペイの街を再び埋めなおすという計画まで浮上している。
どのように残すか、ここにはその葛藤が残っているのである。



ヴェスヴィオ火山によって地中に埋まったポンペイは古代ローマの都市の在り方、日常生活を詳しく表す世界的にも唯一の場所として1997年世界遺産に登録された。
今でも人間の石膏が悲劇を伝えているのである。



ぜひ、この石膏の写真ご覧になってください。
彼らの最後が見て取れます。
ちょっと泣きそうになってます。
彼らの逃げまとう姿、悲痛な顔、すべてがわかります。
ぜひ、行ってその場所を見てみたいものです。