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 【[雑学]ヨーロッパ

世界遺産雑学127--特殊な世界遺産Vol.23 --
2000.12.30
 
世界遺産雑学127

特殊な世界遺産Vol.23
「電波」

--大陸を離れた者へ伝えるメッセージ--


海岸近くに並ぶ巨大な鉄塔群
これがかつて土地を離れた者への心の支えとなる
新大陸へ送られた手紙
それを電波に乗せて


ヴァールベリ・ラジオ放送局   スウェーデン

北欧・スウェーデン
この北海側の海岸沿いにある街、ヴァールベリ。
ここにはのどかな風景が続く
しかし、海から近い場所に異色の塔が建つ
それこそ「6基の鉄塔」
すべては海に向かい一直線に建てられた
それは海の向こう側に電波を送るため
故郷を去っていった者にメッセージを伝えるために


時は19世紀末期。
スウェーデンではある悩みを抱えていた。
それは国自体が貧しかったこと。
このため、国民は祖国を離れることを決意する。
国民は自ら積極的に移民を開始したのである。
彼らの向かった場所は新大陸・アメリカ
夢の大地で成功を手に入れるため旅立っていったのである。
それもたくさんの人が。
最終的にはスウェーデンの人口の1/4が祖国を離れたのである。
知り合い・親族の誰かはもう会えない場所へと旅立っていった。

このため、スウェーデンでは新大陸への手紙の輸送が活発に行われていた。
それは旅立った者への連絡のため。
しかし、手紙では往復でも数十日かかってしまった。
至急の連絡が行えなかったのである。
そこである一つの技術が導入された。
「電波」である。
スウェーデンからアメリカに向けて電波を飛ばし受信してメッセージを伝える計画が持ち上がったのであった。
こうして選ばれたのがヴァールベリ。
アメリカ大陸の方角へちょうど海が向いていた場所。
さらに広大な敷地が確保できる最適な場所であった。

そして1923年に完成する。
127mにもなる6基の電波塔
それが一直線に380m間隔に並ぶ。
電波を増幅させるために6基も必要となったのである。
電波を発生させる装置も当時の最先端アレクサンダーソン製
アメリカまで到達する電波となると膨大な電力が必要とした。
それがアレクサンダーソン式200kw交流発電機によって可能となった。
すべては最新の技術が導入され、アメリカへメッセージを伝えたのであった。
スウェーデン国民の言葉を代弁するために。

しかし、このヴァールベリ・ラジオ放送局には一つの問題があった。
長波長を使用していたこと。
時間がたつにつれて長波長よりも短波長の方が通信には有効だと判明していくのである。
1950年の最盛期を超えるとどんどん、この電波を使うものがいなくなった。
このため、アメリカとの通信を断念。
潜水艦との連絡用に転用されることになる。

が、技術はどんどん進歩していきついにラジオ放送局の閉鎖・解体が決まった。
最後にこの閉鎖を電波に乗せてラジオに報告する。
するとこの放送を聞いた人たちが保存の声を上げ始めた。
スウェーデン人は過去にこの放送局に思いを託したことを忘れていなかったのである。
こうして保存が決定。
現在、当時の無線送信設備は完全に保存されている。
そればかりか今でも電波を発生させることが可能なほど保存状態が良いのである。
長年整備を行ってきた職人たちのなせる技であった。



ヴァールベリ・ラジオ放送局は現存する唯一のラジオ初期の放送局であるとともに通信技術の発展を示す場所として2004年世界遺産に登録された。
一度は解体を決定された場所が国民の努力で再び光を見出された場所であった。




ホント行ってみたい。
特殊も特殊。
電波ですよ!!
世界遺産とは守らなければいけない場所。
それは各業界に及びます。
建築、製材、製本などなど。
それだけ奥が深いんです。