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 【[雑学]ヨーロッパ

世界遺産雑学139--「平和の祭典」発祥の地--
2000.12.30
 
世界遺産雑学139

--「平和の祭典」発祥の地--

かつてここでは皆、各能力を争った
優勝者には多大な名誉が与えられたのである。
しかもその際は停戦を結び絶対に戦争は起きなかった
それこそ平和の祭典「オリンピック」


オリンピアの考古遺跡  ギリシア

ギリシア南西部、オリンピア
自然にあふれたクロノス丘に並ぶ神殿群
多々の神が住むといわれたオリンポス山から名前がとられたこの場所は全知全能の神「ゼウス」を崇めている。
ここではかつて4年に一度スポーツの祭典が行われていた。
当時は地元のお祭りにすぎなかったがギリシア世界を巻き込む祭典へと発展。
祭典が行われている際は戦争が起こらない。
この概念が近代に取り入れられ平和の祭典が復活する。
オリンピックという4年に1度の祭典として。


オリンピアの地に人が住み着くのは紀元前3000年頃。
この地が肥沃な土地であったため住み着くようになった。
その後、紀元前1000年頃にクロノス丘にはゼウス崇拝が始まり神殿が建てられるようになるのである。
ゼウス信仰の一つの儀式として競技大会があった。
人々は自分の足の速さを比べるお祭りを各地で行ったのである。
当初は各田舎で協議が行われ、その中でもデルフィ・ネメア・イストミア・オリンピアの4カ所が大きなお祭りであったとされている。
しかし、この中でも特にオリンピアの競技大会が重要視されていく。
徐々に人が集まりだし、それはギリシアを巻き込んだ大会へと変貌していくのである。

競技大会は当初1種目しかなかった。
1スタディオン競争。
現在の単位に直すと192.3m短距離競走となる。
しかし、人々が増えるにつれ、中距離・長距離・幅跳び・円盤投げ・槍投げ・レスリングなどなど最終的には13種目となったのである。
また、競技者増加に対してオリンピアの遺跡も拡大されていく。
当初ゼウスの神殿しかなかったが、競技に必要な様々な施設が建設される。
短距離競走や中距離などを行ったスタディオン(スタジアムの語源)
スタディオンにつながる入場門
勝利の女神、ニケの像
大会競技の審査や評議員を収容するブレウテリオン
貴族や優勝者たちを迎えた迎賓館
各競技の練習の場所であった、ギムナシオン(体育館)
会期中の宿泊施設やヘラ神殿など。
特にゼウスの神殿には高さ20mにも及ぶ壮大な神殿に建て替えられ、4階もあろうかというゼウス像が安置されていた。
オリンピアは一躍繁栄の一途を辿るのである。

こうして、オリンピアには4年に1度農閑期を狙って開催。
会期は1日から5日間に延長される。
また、参加者はギリシアに住む市民、とくに男性のみに限られていた。
女性は見物することすら許されなかったのである。
競技は他の順位は関係なく、ただ誰よりも早く、誰よりも遠くが目標とされていた。
優勝しか順位は存在しなかったのである。
しかも優勝してももらえるものはオリーブの冠のみ。
しかし、この冠をもらえることが名誉の証。
人々は名誉だけのために己の肉体を鍛えたのであった。

また、古代オリンピックでは一つの特徴があった。
オリンピック開催中は一切の戦争を禁じたのである。
オリンピアの競技大会が決まるとギリシア中に伝令が飛び、各国は休戦を締結。
オリンピック前後の3か月は戦争が起こらない世界を実現したのである。
このため、競技者は戦争に巻き込まれず安心してオリンピアの地に向かうことができたのである。
まさしく平和の祭典であった。

しかし、こんな繁栄した古代オリンピックがいつしか失われることとなる。
それには2つの要因があった。
一つは不正である。
優勝という名誉はいつしかお金が絡み、優勝すると自国から賞金がもらえるようになってしまった。
このため、このお金をもらうために競技者や審判に賄賂が蔓延。
いつしか純粋な競技ではなくなってしまうのであった。
もう一つの要因はキリスト教である。
ギリシアは時代がたつとローマ帝国の属州となっていた。
しかし、ローマ帝国はこのオリンピックを推奨。
挙句の果てには皇帝が強引に競技を加え、自分が賄賂を使い優勝するという出来事まであったほど。
が、ローマ帝国はキリスト教の信仰を抑えることができず国教と定める。
古代オリンピックはゼウスに捧げる大会であったため、宗教が異なってしまう事態となってしまう。
このため、テオドシウス帝の代で廃止を余儀なくされてしまうのであった。
こうして、オリンピックは歴史の舞台から消え去ることとなる。

しかし、古代オリンピックの概念が再びこの世に現れることとなる。
廃止から約1500年後の1896年。
フランス人クーベルタンの提唱により近代オリンピックの開催が決定する。
場所はギリシア・アテネ。
古代と全く同じ手法をとり、オリンピック開催中は戦争を起こさないという概念が取り入れられている。
その後、第一次世界大戦・第二次世界大戦などで何度か中断されているが、今でもこの概念は変わることなく、純粋にスポーツの祭典としてこの世に息づいているのである。
聖火もオリンピアのゼウスの妻ヘラの神殿から採火され、オリンピックの地へ運ばれている。
そして2004年、21世紀最初のオリンピックは発祥の地ギリシアで行われた。
マラソンのゴールになるスタジアムはオリンピアのスタディオンを真似て作られているのである。
現在、オリンピアの遺跡は長年の風化や地震により大部分が崩れているが、それでも今なお古代オリンピックの息吹が感じられているのである。


オリンピアに残る遺跡群はギリシア建築ドーリス式の発展を顕著に示す遺跡であり、古代オリンピック誕生の地であるとして1989年世界遺産に登録された。
ゼウスに捧げた祭典は今も形を変えて生きづいているのである。



平和の象徴。
ちょっと信じられません。
なぜならば、争っている最中にでも、休戦しオリンピックへ向かう。
現在の世の中でも難しいのですが。
なんせモスクワ大会とか戦争によって中止されていますし。
前回のオリンピックの時はイラクとアフガニスタンは戦争していましたし。
特に古代の方は期間の前後3か月戦争が起こらなかった。。
う~ん、すごいです。