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 【[雑学]ヨーロッパ

世界遺産雑学55--特殊な世界遺産Vol.3--
2000.12.30
 
世界遺産雑学55

特殊な世界遺産Vol.3
「産業遺産、風車」

--水との戦いから得た景観--

人々はある災害から頭を悩ませていた。
それこそ「水」
国土が海面よりも下にあるために絶えず水との戦いがあった。
そして、あるものが使われるようになった。
それは「風車」

キンデルダイク=エルスハウトの風車群  オランダ王国

オランダとは実は和名。
正式名は「ネーテルランド」と呼ぶ。
ネーテルランドとは低地という意味を持つ。
名のとおりオランダは国土の27%が海抜0mより低い位置にある。
このため、先史時代からこの場所は水と湿地との戦いでもあった。
一時は一度の洪水で数万人の命が失われるほど。
この世界遺産があるキンデルダイクも水に悩まされた土地の一つ。
子供の堤防という意味を持つキンデルダイク
この名は水がひいた堤防に赤ちゃんのゆりかごが取り残された事から付けられた。

そんなオランダに画期的なものが伝来してくる。
それが風車だ。
風車はもともとイランで発明された。
これが、十字軍によってヨーロッパ中に伝来したのである。
当初は製粉用に風車が利用されていた。
しかし、これを水の排水用に使えると考えたオランダ人は風車を改造したのである。
これによりオランダ中に広まった。
そして風車はオランダ中で1万基が稼動するようになった。
いたるところに風車が立てられたのである。

しかし、時代はこの風車の存在を消していった。
産業革命の到来である。
産業革命の中で蒸気機関が発明された。
それを機会に水揚げのポンプがオランダの主役となっていった。
こうしてオランダに風車がなくなったのである。
ところが、風車が再び活躍するときが来た。
それは第二次世界大戦の到来。
戦時中はどこの国も物が手に入らない状態で、特に工業用のものはすべて武器などに使用された。
これにより、ポンプの動力の石炭が不足したのである。
困ったキンデルダイクの住民が風車を復活させた。
こうして、キンデルダイクには19基の風車が今も残るのである。

じつは風車は水の汲み上げだけに使用されたわけではない。
通信手段としても大きな役割を担っていた。
その通信手段とは羽の角度。
羽が頂点より少し手前で静止すると結婚式や出産などの祝い事
羽が頂点より少し後ろに静止しているとお葬式などの不幸
という、人々の連絡代わりになっていたのである。
中でもすごいのは第二次世界大戦時。
ナチス・ドイツが侵攻してきたことを羽の角度を使用して連合国側に伝えたのである。
それは通信設備並みに早かったと言われている。


キンデルダイク=エルスハウトに残る風車群は人為の加わった美しい景観であるとともに、人間の不屈の精神の賜物であることから1997年世界遺産に登録された。




今回は風車の世界遺産でした。
昔ながらの風車が今も存在している。
ぜひとも見てみたいところです。
じつは、この風車につながる世界遺産があります。
次回は急遽その世界遺産を紹介します。
この内容に深くかかわっている世界遺産。
少し、明日の内容に触れてます!!