TOP > ひさほゆうのリアルタイム世界遺産旅行ブログ

カテゴリー
ひさほゆうが独自の視点で世界遺産を解説!
最新コメント

 【[雑学]アフリカ・中近東

世界遺産雑学63--支配され続けた有能な民族--
2000.12.30
 
世界遺産雑学63

--支配され続けた有能な民族--

ここは列強に支配された街
それも数千年以上十数カ国にもにわたったのである。
そんな支配を受け止めた民族がいた
フェニキア人である

フェニキア都市ビブロス  レバノン

レバノン、数千年前ここは肥沃な土地であった。
それはローマの穀物と呼ばれるほど。
そのため、列強の国がここを支配する事を望んだ。
それは戦略上の要衝でもあったためである。

こんな危険な場所に住み着いたものこそフェニキア人である。
彼らがここに住んだのには理由があった。
それは交易である。
レバノンには昔からあるものの原産地であった。
それはエジプトではけして手に入らないもので、しかも生活や戦争にとても重要なものだった。
このため、エジプトは躍起になってこれを手に入れようとしたのである。
それこそ「木」
これに目をつけたフェニキア人はレバノンに原生している「レバノン杉」を交易のものとしてビブロスを築いたのである。

レバノン杉
かつてはこの杉のために戦争が起こったほどの高価な木
それは芳香を放ち、いつまでも朽ちにくかったため各地で珍重された。
もちろんエジプトでは神殿や船に使われ、杉から出る樹液はミイラ作りに欠かせないものであった。
エジプトのファラオたちはこの高価な杉を大量に買い、さらにビブロス王のご機嫌を採るために財宝を送っていた。
大国の王が一都市の王に貢物をするという不思議な出来事。
それだけ杉は貴重であった。
この交易はビブロスに巨万の富をもたらしたのである。

こうして海洋の民フェニキア人として各地に交易するためには必要なものがあった。
それは「文字」
交易の記録を残すためには文字が必要不可欠であったのである。
このため、フェニキア人はフェニキア文字を生み出した。
古代エジプトのヒエログリフを模したとされるこのフェニキア文字は実は現代の言語と密接な関係を持っている。
それは「アルファベット」の原型
アルファベットといえば現在世界で一番使われる文字。
英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語などなど。
すべてはアルファベットで出来ているのである。
フェニキア文字は世界最古のアルファベットの原型であるとされ、それがギリシャに渡り現在のアルファベットに変化した。
現在の文字のルーツである。

このように巨万の富を得たフェニキア人であったが、実は大国に支配されている人種でもあった。
それは立地にある。
ビブロスはアフリカ大陸、ユーラシア大陸の中間にあり、東のメソポタミア、南のエジプト、北のヒッタイトなどの列強に囲まれた場所であったため。
東西世界の接点という立地は戦略上の要衝にあたったのだ。
エジプト、アッシリア、バビロニア、ヒッタイト、アケミネス朝ペルシア、ギリシャなど相次いで支配された。
しかし、この大国に支配された中でフェニキア人は生きてきたのか。
それはフェニキア人が異民族に抵抗せずに従属したためである。
このため、大国はフェニキア人の交易を受け入れ、地中海を推進する事を容認したのである。

ビブロス。
その名前の由来は交易品の中にあった。
エジプトの紙
「パピルス」
このパピルスをギリシャ人が読んだときにビブロスと読んだためこの名前となったのである。
さらにビブロスはキリスト教の聖書
「バイブル」
の語源ともされているのである。
そんな、ビブロスはイスラム教との支配後衰退。
古代の遺跡は土に埋もれていった。
現在ここには最古のフェニキア文字の書かれた石棺、ローマ遺跡、十字軍要塞、オベリスクなど沢山の時代の貴重な遺跡が残っているのである。


歴史上7000年以上も途切れることなく人々が暮らし続けた街ビブロスは当時の地中海の建築に大きな影響を与え、各時代の遺跡が残るため1984年世界遺産に登録された。
現代の文字のルーツがある街を。




初めて中東の世界遺産の紹介でした。
しかし、今ここは危険になりつつあります。
戦争を起こすイスラエルの隣にあるため。
この国は先日もイスラエルの空爆にあっています。
宗教は怖いですが、歴史が失われるのだけは許せません。