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 【[雑学]中南米

世界遺産雑学125--庭に宇宙を見た天才建築家--
2000.12.30
 
世界遺産雑学125

--庭に宇宙を見た天才建築家--

外から見たら味気のない工場
特に周りの建物と変わったところはない
しかし、一歩中に入るとそこは原色の空間
さまざまな色が目に染まる


ルイス・バラガン邸と仕事場  メキシコ

メキシコ合衆国、首都メキシコシティ。
アメリカ大陸中部最大の都市であるこの街には一度見たら忘れられない塔が建つ。
高級住宅街シウダード・サテリテの横に走る高速道路の間に建てられた塔
「サテライトタワー」
すべては4本の塔で構成されているが目を引く場所はその色
赤・白・青・黄
すべては原色そのままで塗られている。
また、それぞれの塔は三角形でたてられそれが効率的に並んでいる。
見る場所が少しでも変わったら全く違うシンボルに見える塔
こんな高速道路に異色のように建つ塔を建てた人物こそ
「ルイス・バラガン」
彼は、メキシコの天才建築家として数々の建物を建てた。
そして彼の家と仕事場が世界遺産に登録されたのである。

ルイス・バラガンは1902年グアダラハラに生まれる。
大学を技術系大学に進学したが、その時独学で建築を学んだ。
そして卒業後ヨーロッパを放浪。
そこで彼の人生を変える二人の人物と出会うのであった。
近代建築最大の巨匠「ル・コルビジェ」
フランスの作家にして造園家「フェルディナン・バック」
ル・コルビジェは現在の建築に革命をもたらした者。
直線を多用し、コンクリートを効果的に使いモダニズムを確立した。
ルイス・バラガンはそのモダニズムを学ぶためにコルビジェの講義を聞いたほど。
その後のルイス・バラガンの家にはこのモダニズムが多く取り入れられている。
フェルディナン・バックは庭園の芸術家
ルイス・バラガンはバックの庭園に感動し、生涯庭園にこだわり続けた。
また、自分の庭園に対する思いを語った時にバックの言葉を引用している。
「庭はそれ自身の中に宇宙全体を持つ」
庭を多用するバラガンの本質でもある。

こうしてメキシコに戻ったルイス・バラガンは数々の建築を残していった。
初期の建築では前庭に重点を置いたり、後期になると後庭に重点を置いたりと。
中には中庭に力を注いだものまで。
また、彼は庭だけではなく色にもこだわった。
特にメキシコで昔から使われている色に。
ピンク、黄色など大胆な色を使用するメキシコの建築
彼もその流れを踏襲し、さらにイスラムや地中海沿岸の建築を融合。
色の配置で自然を感じたりするようになっている。
彼のすごいところはこんな大胆な色を使っていてもそれ自体に違和感がないこと。
うまく配置や組み合わせなどによってそれを可能としているのである。

こうして数多くの建築を残してきたルイス・バラガンは自身の工房を作ることを決めた。
そこはメキシコシティ郊外。
住宅地の中にあるために外見から原色を使うことができなかった。
このため、外観は周りの住宅と全く変わらない色を採用。
しかし、中に入るとそこは色とりどりの世界。
また、外光を効率的に取り込み、金の部分が太陽の光によって輝く。
中庭には常に水を流れさせ、音でもその空間にアクセントを与える。
まさしく異空間と呼ぶにふさわしい場所である。
ルイス・バラガン邸と仕事場はまさしく彼の最高傑作となった。

しかし、ルイス・バラガンは晩年まで有名になることはなかった。
それはすべての作品をメキシコで作成したこと。
当時の建築はヨーロッパで作られていた。
建築家は名声や評価をヨーロッパで得たのであった。
ルイス・バラガンはあくまでメキシコの風土に合った建築を作った。
このため、生涯メキシコ以外で作らなかったのである。
そしてルイス・バラガン73歳の時、一冊の本にバラガンの作品が紹介された。
この本により瞬く間に最も有名な建築家となる。
その後、78歳の時に建築家のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞。
ルイス・バラガンはそのプリツカー賞のスピーチの際、庭についてこう語っている。
「庭を創る際、建築家は、自然界との協調を仰ぐのです。美しい庭の中に、自然の威厳は絶えず存在します。しかしながら自然は、人間のプロポーションを縮小し、今日の生活における攻撃的なものに対する最も効果的な避難所に変わりうるのです。」
庭にすべてを見出したルイス・バラガンの真髄である。

こうして富も名声も得たルイス・バラガンは1988年この世を去った。
享年86歳。
自分の作り上げた家の中で息を引き取ったのである。
その15年後、この場所は世界遺産に登録。
ルイス・バラガンがいかに天才だったかを示すものである。


メキシコシティーにあるルイスバラガン邸と仕事場は自然の要素を巧みに織りいれ、モダニズムの中にメキシコ文化を融合させた最高傑作として2004年世界遺産に登録された。
この場所は現代建築において大きな影響を与えた場所であった。




ここ、びっくり。
こんな建築もあるのですね。
こんなに大胆な色を使用しているのに全然目が疲れない。
というか、ずっと見ていたくなる。
そんな建築です。
ぜひ一度写真見てくださいね。