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2010.09.26

 観光・見所

【コラム】世界遺産ルアンパバーン 通の歩き方③ 橋のお話

向こう側に行ってみたいのは好奇心の賜物。山があれば峠があって、壁があれば抜け穴

があるように、川には橋がつきものです。

ルアンプラバンでまず思い浮かぶのがカン川にかかる鉄製の橋。地元の人が親しみを込め

てカン川鉄橋と呼ぶこの橋、実は2代目で、1966年の洪水で先代の橋が流された後の

再建です。この橋の形式はバーレー式と呼ばれるもので、工場生産の規格化された鉄骨

部材から出来ており、建設や解体、運搬、再利用がすばやく容易に出来るうえ、組み合わ

せる部材の数によって長さや幅の違う橋を簡単に作れるという特徴を持っています。カン川

鉄橋の両側にはちゃんと歩道がついていて、乾季には20m下の水面をみて歩くスリルが味

わえます。



 

遺産地域内には小さいけれどももう一つ鉄橋があります。これもバーレー式です。場所は

ワット・アパイから南に60m。ホアイ・サーンヤーンという小川に架かっています。この川の名

前は、大寺院であるワット・ヴィスンの造営で使役に駆りだされた象(サーン)たちが、この小

川(ホアイ)を渡るのを怖れた(ヤーン)ことが由来とされています。これから150mほどのと

ころには、象たちの骨を収めて供養したとされるタット・ドゥックサーン(象骨の仏塔)の廃墟

があり、観光用に整備されています。川を利用して運ばれた建築資材がワット・ヴィスンに

程近いこのあたりで陸揚げされ、象によって現場まで運ばれたのでしょう。往時の賑わいが

偲ばれます。この一帯はルアンプラバンでは例外的に路地がいろんな角度で曲がっていて

また古い民家も残っており興味深いところです。

さて、これら近代的な橋が導入される以前に橋は架っていなかったのでしょうか。もちろん

そんなことはありません。木や竹を組んだ伝統的な橋がカン川に架かっていました。ちなみに

1956年には橋が三か所に架かっていたことが航空写真で明らかです。その場所は、カ

ン川鉄橋の位置、ワット・シェントンの先の半島の突端、そしてもう1箇所はそれらのちょう

ど中間でカン川が大きく右に曲がるあたり、ワット・パファンとワット・パンルアンを結ぶ位置で

した。昔は今よりも両岸の交流が緊密だったことをうかがわせます。これらは乾季のはじめに

架けられ、やがて雨季になって水嵩が上がるとそのまま流してしまう、いわゆる流れ橋という

ものです。川床に木の杭を立て、桁と梁で繋げた上に割り竹を敷いて橋面としています。上

流側には櫓を組んで台をつくり、そこに人頭大の川原石をいくつも載せて橋が水流に流さ

れないように重みを加えています。このように、全てその辺で手に入る材料を用い、修理も

簡単で、水に流した後は杭(悔い?)も残らないという、これらの流れ橋からはヒューマンス

ケールな環境にやさしい知恵が感じられます。

流れ橋は、鉄橋が出来てまもなく作られなくなったと考えられています。が、去年数十年

ぶりにパンルアン村の住民によって一基が新設されました。工事費は200ドルを大きく超え

ない程度。住民の日常生活の助けとなったばかりか、徴収した通行料で村の収益にも結

びつきました。混雑する街の中心部を避けて閑静な対岸に気軽に行くことができるので、

観光客にも好評でした。はたして今年もカン川の風物詩が復活するのでしょうか。乞う御期

待。

【テイスト・オブ・ラオス11号掲載】
文/写真【かわぐち ゆうし】
2000年から2008年まで修復建築家としてルアンパバンの保存にたずさわる。