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2010.11.25

 過去記事&コラム集

ラオスの日本人~前川 佐知さん



彼女にとってラオスとのつながりは織物だった。
高校生の頃、総合美術から実際に手を使って立体的な物作りをする工芸の世界へと興味を持つ。
その中で選んだのが織物だった。実際に織り始めてみて分かったことは、絵画などに比べると、規制が多いこと。
創作の時間の前に、経糸を張ったりと準備作業が多い。
時には、何千本もの経糸を織機の筬にある穴一本一本に糸を通す。
根気のいる作業も修行と思いながら続けた。
準備の割りに短い創作時間に嘆きつつも、出来上がった布を織機から外す瞬間は、この上ない喜びだという。


織物の勉強にも、机上の学問とフィールドワークがある。
織の作業は、古来から家庭内での女性の役割として世界中で行われてきた。
各国、各地域の習慣、文化を吸収して、織それぞれが異なった性格を持つのが面白い。
「ラオスの田舎などで見たことのない織機などを見つけると、初対面でも思わず、私にも織らせてねって、言ってしまうんです。」

好きなことには、体が先に動いてしまうらしい。
そんな彼女は、いつしか、女性一人でバイクに跨りラオス各地を見て回っていた。
すべては、織りのある原風景を見たかったことに起因する。

「初めてラオスに来た時、普通の民家の軒先で織りの作業が行われている風景に感動しました。」

「ぶっつけ本番」で物事を進める彼女も、海外への生活には抵抗がなかったわけではない。
日本での就職の機会が失われるかもしれない。
しかし、「30歳を一区切り」とし、好きなことに夢中になろうとラオスへ渡った。
そんな彼女も27歳になる。これからの将来をどう考えているのか?「染織の基礎知識、文化人類学の分野まで広げて、織物の再勉強をするつもりです。大学院にも行きたいし・・・、そうやって考えると30歳は楽に超えているんですよね。」おどけながら話す彼女にとって織物とは、天職であったのかもしれない。

思いついたらフィールドに立っている行動派の織物研修生は、今後どう羽ばたいていくのだろう。
繊細な織物世界の、逞しい情熱を見守っていきたい。


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前川 佐知: 1979年、兵庫県丹波の生まれ。2004年から約一年半の間、ホアイホン染織職業訓練センターの職員として働いた後、染織の里を訪ねて歩く。現在は、大学の共同研究員としてラオスと日本を行き交う。


※テイスト・オブ・ラオス2007年10~12月号 No.10 より転載