以下、大使館からのお知らせです。
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在留邦人の皆様へ
平成22年12月8日
在ラオス日本国大使館
30日,当館において第11回海外邦人安全対策連絡協議会が開催されましたので,その内容につきご連絡いたします。皆様の安全のためにご活用頂ければ幸甚です。
1.最近の治安情勢
当館より,最近の治安情勢として,以下を紹介しました。
(1)治安情勢概要
(イ)国内治安情勢は,大規模なテロや暴動等が発生する危険性がある状況にはない。しかしながら,経済格差や禁止薬物の蔓延などに起因する一般犯罪(特に屋内外を問わない窃盗事件)には注意が必要で,さらに銃器を使用した強盗殺人・強盗致傷事件が引き続き発生するなど,事件は凶悪化傾向にある。
(ロ)当地において,クラスター弾に関する条約第1回締結国会議(9~12日)が開催され,ラオスがホストをする国際会議としては過去最高の世界100カ国以上から1000名を超える関係者が当地を訪れた。また、ビエンチャン遷都450周年記念行事がタートルアン祭りとともに催された(15~21日)。今後も12月2日にはラオス建国35周年記念行事が催される予定であり,来年当初に向けて5年に1度の国民議会選挙・党大会が控えており,治安維持対策は継続して維持されるものと思われる。
(2)反体制勢力情勢
(イ)例年,反政府勢力モン族とラオス政府軍との衝突は,乾季を中心に発生している模様であるが,今年は雨季・乾季問わず衝突は発生しており,政府軍・モン族双方に犠牲者が出ている模様である。
(ロ)旧サイソンブン特別区(現在のシェンクワン県及びビエンチャン県の一部)を縦断する道路の通行に関しては引き続き、外国人はもとより,周辺地域に居住していないラオス人に対しても通行が禁止されている。
(3)一般犯罪情勢
(イ)上述のとおり,一般犯罪が凶悪化しているとともに体感治安が悪くなっている。当館手集計による犯罪統計(出典:当地警備会社)においても2008年,2件しか認知されなかった強盗事件が2009年は12倍強の25件,本年にあっては11月1日までで既に32件の強盗事件の発生が認知されている。邦人案件として,トゥクトゥクの運転手の甘言に乗った邦人観光客もその後路地裏に連れて行かれ,刃物を突き付けられ所持品を強奪に遭う事件が発生した。
(ロ)最近では,謝金警備員を配備している当館館員宅に深夜,賊が侵入し現金を初めとする貴金属等が盗難に遭う事件が発生したほか,当館ラオス人現地職員宅に2週間で計4回にわたり賊が侵入し,現金・貴金属の他に冷蔵庫内の食品までが被害に遭う事件も発生した。
(ハ)新聞報道でもあるように,タイ王国チェンライ県から不法入国したタイ人が深夜(午前零時頃)市内アヌーパラダイス・ホテル前の屋台で食事をしている外国人2名に向かって突如発砲する事件や同じくチャンタブリー郡で土曜日の白昼警察と犯人が銃撃戦を行い犯人側2名が射殺されると言った記事も掲載された。
(ニ)また,残念なことに先般開催されたタートルアン祭り期間中も邦人女性観光客が強盗事件に遭い,金品を強奪される事件も発生した。こういった状況の中で益々個人個々の防犯対策が重要になると思われる。
(4)交通事故対策
(イ)交通事故の現状
先般,治安維持省が発行する機関紙で昨年度(2009年10月から2010年9月)の交通事故(ビエンチャン特別市)に関する記事が掲載された。昨年度のビエンチャン特別市における交通事故件数は,1812件を数え,交通事故死亡者は225名で,当館が把握している限りで初めて年間200名を超える死亡者数となった。2010年上半期における交通事故件数も既に928件を超え,死亡者数も120名と更なる増加傾向にある。
上述した治安対策の一環として朝夕と主要路線に交通警察官が立ち交通整理をしているが,交通量は減るところか増える一方で秩序の保たれない交通渋滞が至るところで発生している。交通事故の9割以上が無免許・酒気帯び運転が起因しており,道路の無秩序化は深刻な状況になっている。
当地における交通事故対応は,警察官が来るまで時間が掛かる上,保険会社の対応にも大きなバラツキがあり,さらに当事者車両を差し押さえるなど,終結するのに膨大な時間と労力を必要とすることから,滅多に警察に届けることはない。こういった実情の中,交通事故の実数は数倍に膨れ上がっていると考えられる。
(ロ)対策
先般,在留邦人が南部パクセーにおいて車両を運転中,飲酒運転でしかも速度超過で無謀な追い越しをしてきたオートバイと接触し,オートバイの運転手が死亡すると言う事件が発生した。また、当館館員も無免許で周辺確認をせずに対向車線に飛び出してきたオートバイに衝突された事件もあった。
対応としては,様々な可能性を念頭に保険への加入等備えを万全にするほか,交通量の集中する時間帯や場所を避けて運転する,夜間や降雨時等の視界が狭まる時の運転には特に気を付ける,飲酒運転は絶対にしない等心がけていただきたい。
(5)その他
(イ)長距離バスの交通事故
11月9日付,ビエンチャン・タイムズ紙によると,ウドムサイ発ルアンパバーン行き25名乗り長距離バスがルアンパバーン県ナンバク郡において崖から転落し,運転手を含む18名が死亡する事故が発生した。
運転手も死亡しているため,はっきりとした事故原因の解明には至っていない模様であるが,下り坂の急カーブにおいてブレーキの不具合が発生したことが原因ではないかとの報道。
前回の本協議会でも伝えたように,北部の道は決して整備された道とは言い難く,その中を整備の足らない車・根拠に基づかない,経験則のみの運転手が運転する状態となっている。呉々も観光客等への注意喚起をお願いしたい。
(ロ)ミャンマー国境情勢
報道にもあるように,タイ・ミャンマー国境のカレン州ミャワディにおいて,少数民族武装組織とミャンマー国軍との間で武力衝突が発生し,一般人の間に死傷者が生じている。ミャンマー・ラオスの国境付近やその周辺地域も同様の武力衝突が発生するかは不透明な状況であり,同地域は安全上の理由から原則外国人の立ち入りを禁止する「旅行制限区域」とされており,渡航の自粛を検討していただくとともに,やむを得ない事情により制限区域への渡航を検討される場合は最新の情報入手に努めていただきたい。
2.緊急事態発生時の対策(情報伝達及び安否・所在確認)について
当地において緊急事態(感染症の蔓延,自然災害,テロ事件,内乱,クーデター,暴動,飛行機事故の発生等)が発生した場合,当地に居住している在留邦人及び邦人旅行者の安全を確保することが最も重要ですが,そのためには,緊急事態が発生した後,速やかに発生した緊急事態に関する正確な情報を邦人に確実に伝達し,積極的に邦人の安否・所在を確認し,死傷者がいる場合は,その援護を行う必要があります。
当館が想定している緊急事態が発生した際の在留邦人や旅行者に対する情報伝達及びその安否確認のための主な作業内容は以下の通りです。これらの作業を円滑に行うためには,本件会議に出席している団体の協力が不可欠であるので,緊急事態発生時における各団体による協力を求めると共に,各団体が緊急時に可能な情報伝達及び安否確認の手段について確認しあいました。
(1)情報提供
事件発生後,大使館では,ラオス当局,各国外交団,国際機関,医療機関,JICA,空港当局,旅行会社,ホテル,公開情報(テレビ、ラジオ、インターネット等)、現場等から情報収集、事実確認等を行う。
これらの情報をもとに,在留邦人及び旅行者に対して適切な情報を提供する。情報の伝達手段としては,以下を考えている
(イ)大使館からのお知らせメールを通じた情報提供
在留届提出者(筆頭者)及び当館ホームページからEメール・アドレスを登録している在留邦人に対して,Eメールにて情報を配信する。なお,同メーリングリストには,現在438名が登録(11月19日現在)。
(ロ)大使館ホームページを通じた情報提供
上記(イ)の情報を大使館ホームページにも掲載する。
(ハ)危険情報の発出
外務本省を通じて各種渡航情報(「海外危険情報」,「スポット情報」,「広域情報」)を発出する。
(ニ)資料の配付
上記(イ)の情報を大使館及び日本人が集まる場所で配布する。
(ホ)報道機関を通じた情報提供
報道機関(NHK衛星放送等やNHK短波放送「ラジオジャパン」)を通じた情報提供を行う。
(ヘ)日系企業・団体等を通じた情報提供
日系企業・団体等に対して,それぞれの連絡網等を活用して,日本人会会員,商工会議所会員,日本人補習校生徒(及び父兄,先生)等に対する情報提供をお願いする。
(ト)旅行会社、主要ホテルを通じた情報提供
主に旅行者に対する情報の提供を依頼する。
(チ)FM放送機
(必要に応じて)FM放送機を活用して情報提供を行う。
(2)安否・所在確認
緊急事態発生時には,迅速な安否・所在確認作業が求められる。安否・所在の確認方法としては,以下を考えている。
(イ)現場からの情報
事件発生後,速やかに館員を事件現場や病院等に派遣し,邦人被害者がいる場合は,その人定事項等を確認する。
(ロ)大使館からのお知らせメールを活用した安否・所在確認
大使館からのお知らせメールを配信し,緊急事態に関する情報を提供すると共に,当館宛(eojvte@etllao.com)に,人定事項,連絡先,安否状況(何れも家族を含む)について連絡するようお願いする。また,大使館からのお知らせメールに登録していない邦人をカバーするためにも,大使館ホームページにおいても,同様の安否・所在確認の依頼を行う。
なお,大使館では,緊急事態に備え,大使館からのお知らせメールの送受信訓練を実施する予定(別添参照)。
(ハ)在留届に基づいた安否確認
被害者や不明者が少数に特定できる場合等は,在留届及び旅券情報に基づいた安否確認を併用する。
(ニ)日系企業・団体等を通じた安否確認
各企業・団体等に対して,情報を提供する際に,それぞれの連絡網を活用して,日本人会会員,商工会議所会員,補習校関係者(生徒,父兄,先生),JICA関係者(事務所,専門家,シニアボランティア,協力隊員等)の安否・所在を確認するよう依頼する。
(ホ)旅行会社,主要ホテルを通じた安否確認
主に旅行者の安否に関する情報の提供を依頼する。
(ヘ)在留邦人,旅行者等からの無事通報
在留邦人,旅行者等から当館に無事通報がある場合には,当該邦人の人定事項等について聴取し,生存者リストに追加していく。
医療関連情報
当館より,最近の医療関連情報として,以下を紹介しました。
(1)デング熱
今年ラオスではビエンチャンを含む中南部を中心にデング熱が大流行し,これまでに昨年の年間発症者数7810人を大きく上回る2万人以上が感染し,40人以上の死亡が報告されている。また邦人感染者も例年と比べ多かったように思われる。
週間発症者数は8月8日~14日の週がピークで,その後徐々に減少し,現在はほぼ例年並みの水準に落ち着いてきている。地域では、特にビエンチャン特別市,ビエンチャン県,ボリカムサイ,サラワンなどが例年と比べ発症者がかなり多く,また例年発症者が少ないルアンパバーンやウドムサイでも今年度は発症者数が多く報告されている。例年乾季には発症者数は減少するが,今年は1月から4月の乾季の間も例年と比べ発症者数が多かったことから油断はせず,引き続き蚊対策(蚊に刺されないこと,蚊を発生させる環境を作らないこと)を継続していくことが必要である。
(2)コレラ
今年7月にラオス南部アタプー県でコレラが流行,8月には約200人が感染し4人の死亡が報告されている。報道によると流行地は市街地より50km離れた地方で,7月上旬にサンサイ市場で新鮮でないティラピアを購入したことから始まり,患者の身内が行った儀式で多くの村人が参加し調理不十分の水牛の肉を食べた後より,患者数が拡大した模様である。
(3)インフルエンザ関連
(イ)鳥インフルエンザA(H5N1)
ラオスでは今年4月にビエンチャン特別市のサイタニー郡で家禽類への感染が確認されている。ヒトへの感染は2007年以降確認されていないがが,近隣のベトナムやカンボジアでは,今年度鳥インフルエンザの鳥からヒトへの感染が確認されている。
(ロ)季節性インフルエンザ、新型インフルエンザA(H1N1)など
現在ラオスにおいては特殊な場合を除いて確定検査は行っていないため,正確な状況は不明であるが,他国の状況を見ると新型インフルエンザA(H1N1)と季節性インフルエンザの両方が流行している模様。引き続き予防のため手洗いなどを心掛けることが重要。