2012.08.15

 4 ミスターKBのアメリカンスポーツ

どうした、エンゼルス(スポーツキャスター/盆子原浩二)

ロサンゼルスに長いこと住んでいるが、8月がこんなに暑いのは初めてじゃあないかなあ。

たしかに南カリフォルニアの太陽はまぶしいし、照り付けると暑いのは暑い。だけど海側からの風が吹くと、気温は思ったほど上がることはない。確かに8月だから30度を超える日もあるにはある、がこれほどではない。いや、無かった。ところが先週の月曜日から始まったこの熱波は、今までのものとはちょっとばかり違うようだ。毎日30度を超え、しかも相当湿気が感じられる。これじゃあまるで日本ではないかと思っていたら、お天気のお姉さんが言っていた。「今回の暑さの原因は、南から吹き上げる風に相当な湿度を含む、いわゆる『モンスーン』のようなものだ」。習ったぞー、大昔にね。モンスーン気候。ただロサンゼルスでこの言葉を聞くとは思わなかったなあ。



ロサンゼルスは広い。広いから天気予報は大変そうだが、夏の場合の天気予報は、おおむね「今日の天気は晴れでしょう!所により少し雲が出るかもしれません」なんていっておけば4月から9月くらいまでは、まずはずすことはない。もちろん「午前中には厚い雲におおわれることもあるでしょう」とか「山沿いでは雷雨があるでしょう」なんてことを忘れなければ、ほぼ完璧でしょう。よって夏に気になるのは「気温」ということになる。これは結構大変かもしれないね。気温は、まず「ビーチのある海岸部」、これは涼しい。次にダウンタウンを中心に高いビルはあんまりないけど「都市部」、ロサンゼルスの気温と言えばこれを指す。そして「その周辺部」、ダウンタウンよりかなり暑い。さらに海から離れてぐっと内陸の「インランドエンパイア」、とびっきり暑い。アメリカ人はどうしてこんな暑いところに住むのだろうと思うくらい、どんどんどんどんそちら方面が開けているようにも思えるが、不思議なことだよね。 

このブログはMLBのブログだった。忘れてた。よく忘れるけどね。

さて、今日アナハイムで行われたエンゼルスとマリナーズの試合。日曜日のエンゼルスの試合開始は12時35分だ。インターネットで気温を調べてみると、最高気温は34度と出ている。また今日もか、なんて車を走らせる。パーキングに着いた時は、朝9時前だからけっこうさわやかな感じだった。ところが気温はぐんぐん上がる、ソーシア監督の囲み会見はダッグアウトで行われたのだが、11時というのに汗がだらだら状態になる。エンゼルスのダッグアウトは夕日を避けるために3塁側に位置している。ナイトゲーム前は日陰になって気持ちがいいが、デーゲームは太陽が照りつける。前日補給したアルコール入りの水分とさっき補給した水分がすべて出てしまうような難行苦行だ。しかもこういう日に限って長い。初めの方はいろいろな記者から質問が出ていたが、途中からはわずかな日陰に陣取っている記者からだけだ。早く終わってくれと思うが終わらない。ソーシアも「こんな暑い日は、聞いてるよりもしゃべる方がいい」、なんて自分のチームの不調を嘆く。

エンゼルスの先発はジェレッド・ウイーバー(15勝1敗)。対マリナースはバーガス(12勝8敗)、ともにエースで、ともにロングビーチ州立大学出身、と言うかチームメートだったらしい。いくら仲がよくても勝負は勝負だ。特に、前日に岩隈投手に簡単にひねられたエンゼルスとしてはもう負けられない。しかしながら今年のエンゼルス、負けられないはずの試合によく負ける。この試合も、ウイーバーがモンテロに2本も大きなホームランを打たれてしまう。マリナーズのいいところばかりが目立つ試合となり、この暑いなか集まった36,505人を嘆かせる。ウイーバーの連勝記録が10でストップする。エンゼルスにとっては、まさに泣きたくなるような試合であった。唯一の明るい材料は、高橋尚成投手の素晴らしいピッチングか。1-3の8回に登板し、3者連続で空振り三振にし止めたから立派だ。メッツ時代のいい時のように、低めにボールを集めるピッチングを心がけているそうだ。

試合に負けた日のエンゼルスのクラブハウスのドアは、なかなか開かない。メディアはいつかいつかと待つのだが、これがね。暑いから皆いらいらしていたのだが、そのころ中ではソーシアの「檄」が飛んでいたらしい。ようやくドアが開くと、一気に監督の部屋になだれ込む。厳しい質問にも、ソーシアは比較的冷静に応えていく。でもその言動とは裏腹に、ソーシアの右足が上下に震える。そう「貧乏ゆすり」だ。それもスタジアム全体が振動するのではないかと思われる特大のヤツだ。地元に帰ってきて、マリナーズをスイープと目論んだのに、まさかの1勝2敗。47試合を残すばかりになって、首位のレンジャースに8ゲーム差をつけられた。これじゃあイライラするよね。

どうしてこんなに差がついたのだろうと帰りの車の中で考えた。やっぱりレンジャース4連戦の初めふたつをとって、3ゲーム差と迫ったのに、例のダルビッシュが乱れた第3戦での逆転負けが応えているのかなあ、なんて考えていると家に着いた。その試合の後、というか今月に入って3勝8敗だ。これじゃあねえ。

「今日アナハイムは暑かったよ~」ていうと、「ここも負けていない」という答えが返ってくる。オリンピックの閉会式がテレビで始まる前に、ニュースのお天気お姉さんが出てきてこういった。「今日のアナハイムの気温は38度でした」。

34度と信じていたのに、本当は38度。
一気に熱がでた。