高さ約30mという巨大な鉄筋コンクリート製の建造物。
これは、貯水および水圧強化を目的として作られた給水塔。日本の水道局に相当するサイゴン水道総公社(サワコ)の敷地内にある。
給水塔は、ベトナム戦争が終結した1975年以前に作られた。ホーチミン市内には、大小合わせて100基以上あるが、実は数十年前から、まったく使われていない。
というのも、各家庭が、自分で屋上に貯水タンクを備え付けるようになったものだから、給水塔は必要なくなってしまったのである。
中には、完成直後に水漏れが発覚して、40年余、一度も使われたことがない給水塔もあるという。
ホーチミン市当局は、2009年4月、サワコに対し「今後、どうするつもりなのか、検討して報告すべし」という勧告を行ったそうだ。しかし「取り壊そう」「いや、補修すれば使える」と議論百出。市内各所に残された給水塔たちの帰趨は、当分定まりそうにない。
【アクセス】
サワコ(SAWACO)はホーチミン市中心部にあるHo Con Ruaという名前のロータリーにある。聖母マリア大聖堂から徒歩約5分。部外者は敷地内へは入れないが、外からでも給水塔は見える。大型給水塔は、バータ ンハイ通り(10区)、ホーヴァンフエ通り(フーニュアン区)などにもある。
(原稿・写真:朋野昭)