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 【スポーツ観戦】

七夕の願い（Mr KBこと盆子原浩二）

2008.07.13

 

七夕の願い事は、いつものごとく「今年こそはDODGERS優勝！！」。
２０年間優勝から遠ざかるということは、アメリカの法律に厳格に従うとすると、勝利の美酒を味わったドジャースファンは４１歳以上、地元のライバルANGELSは２７歳以上、ちなみにCUBSのファンは１２１歳以上となるはずである。
 
そんなことを思いながら迎えた七夕の夜、ドジャースタジアムでは、一年に一度ではなく、あわやの大記録が達成されるところであった。黒田投手の快投である。ほぼ完全に試合をコントロールした。「腐っても鯛」と言っては失礼に当たるのか、その帝国は崩壊しつつあるものの、名将コックス監督以下、相変わらずの強さを誇るブレーブスとの対戦は、天の川を見るには程遠い明るさの中で始まった。

試合は、両先発投手の小気味良い投球テンポの中で進む。そして５回ドジャースは、故障者リストから復帰したばかりのガルシアパラの久しぶりの第２号ツーランホームランと、一番バッターのケンプのタイムリーヒットで３点を先制し、試合は後半戦へと入っていった。ところが、その頃から試合の雰囲気が何かいつもと違う。そう、黒田投手がパーフェクトに相手を抑えているのである。７回表が終わり、２１人を完全に抑えてベンチに帰った彼のそばには誰も近寄らない。

SEVENTH-INNING STRETCHで「TAKE ME OUT TO THE BALL GAME」をナンシーのオルガンにあわせて皆が歌う、いつもより少し長く感じるあのイニングである。あと６人抑えれば、ドジャースとしては１９６５年９月９日、大投手のサンディ・コーファックスが達成して以来およそ４３年ぶり、ドジャースタジアムでは、当時のモントリオール・エキスポスのデニス・マルチネス投手が達成した１９９１年以来のパーフェクトゲームであるらしい。

そうだ、完全試合といえば、七夕より１０日程前、日本のラジオの番組に出演中、ロサンゼルスの話題とアメリカのスポーツのことを話した後に、アナウンサーの方から「今日のこちらの話題はパーフェクトの事なのですが、MR.KBは立ち会われたことがありますか？」と問われた。１９０１年以降わずか１５回しか達成されていない、まさに貴重な出来事に、「立ち会うことは立ち会いましたよ」と答えた。これが実は、ほろ苦い思い出なのだ。９１年の完全試合の日の少し前、ロサンゼルスで学生時代の友人におよそ２０年ぶりで出会った。

そしてこんな約束をした。「７月２８日の日曜日、夕方ゴルフをハーフラウンドやって、その後で食事行こうか？集合は？ああ４時ね。」そして当日、１時過ぎからの試合を１回から３回まで見て、ゴルフ場に直行する。車でラジオを聴きながら運転していたが、何か落ち着かなかった。そう、完全試合が淡々と展開されていたのである。そしてそれは今回と違い、ものの見事に達成されたのだ。２時間１４分、９５球で。ゴルフ場のパーキング場で聞いた、VIN SCULLYの「PERFECT GAME!!」のさ・け・び・・・。情けなかった！試合に負けたことにではない。それに立ち会えなかったことにである。

さて３９、８９６人が固唾を飲んで見守った七夕の試合は、８回の表、ブレーブスの４番テシェーラのライトへのツーベースヒットによって、残念ながらその夢が打ち砕かれた。打たれた後の一瞬の静寂とため息、そしてスタンディングオベイション。個人の記録よりもチームの勝ちが・・との、大人のコメントを残した黒田投手も、本当はどれだけ悔しかったことか。それにしても１安打９１球、２時間３分の完封勝ちは、久々にいろいろなことを思い出させてくれる快投でもあった。次の試合でビリングスリー投手が４回までノーヒット、次の次の試合でロー投手が６回までパーフェクトに抑えたことをみれば、何か凄いこ8が起こりそうな予兆を感じさせるではないか。そしてまた、シーズン後半も投手陣を引っ張っていってもらいたいと思うファンの願いをも。

天の川を探しに外に出た子供が、「天の川は見えないけど、北斗七星が見えるよ」と、ひとこと。出てみると、そこにはうっすらとではあるが、確かに「ひしゃく」の形が見える。

とっさに、２０年ぶりならアレくらいの大きさのやつで飲んでも許されるのではないのか、と不謹慎にも思ってしまった七夕の夜であった。

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Mr KBこと盆子原浩二