2009.07.24

 アート&デザイン

美の大作の散歩道 デュフィ「電気の精」



「色彩の魔術師」と呼ばれた20世紀フランス画家、ラウル・デュフィ(Raoul Dufy)の回顧展「歓び」(LE PLAISIR)が開催されたパリ市立近代美術館には、無料で鑑賞できる巨大壁画「電気の精」が常設展示されています。


マティスの影響を受けながらも、野獣派(フォーヴィズム)の中で独特の世界を築いたデュフィ。18 歳の時にル・アーヴル市立美術学校の夜間講座へ通い始め、様々な技法を習得しました。デュフィはその右利きの手の技巧にこだわりを感じ、わざと左手でウジェーヌ・ブーダンを模写したり、ルーアンの美術館でドラクロワを学びながら、23 歳でパリの国立美術学校エコール・デ・ボザールへ入学。モンマルトルに暮らしながらモネ、ゴーギャン、ゴッホ、ピサロなどに影響を受けたと言われています。

デュフィの画法の特徴は、画家の多くが採用している、デッサンの下絵から描き始める方法ではなく、最初に絵の具で豊かな色彩ベースを配置して、その上から線描による輪郭を強調するという技法で、生まれ故郷のル・アーヴルやコート・ダジュールの海岸やヨット、競馬場、オーケストラ、薔薇のモチーフなどパステル画と間違えるほどの多彩な油絵を描いています。

1918 年にはジャン・コクトーの舞台デザインを手がけた後、フランスの電力会社の依頼で1937 年パリ万国博覧会電気館の巨大壁画「電気の精」を描く事になり。長さ60 メートル、高さ10 メートルの大作は現在もパリ市立近代美術館で無料で見ることができます。テーマである「電気」について約1年もの研究期間を費やし、ほのかな光を放つ色彩の秘密には、マロジェという科学者が考案したメディウムという用材を絵の具に混ぜたそうです。
その構図は、縦2 メートル、横1.2 メートルの合板パネル250 枚を用いたコンポジションによって、古代から現代までの電気の歴史がつづられ、アリストテレスからエジソンまで、科学の進歩に貢献した110 人の科学者たちと文明社会の変遷が描かれています。

「電気の精」をはじめ、パリ近代美術館では企画展を除く常設展が無料で見学できます。美の大作を散歩するパリの休日を過ごしてみてはいかがでしょうか。