
人生には、時に、空間のポケットに入りたい瞬間がある。
ちょっと、寄り道したいとか。
「現実」という、大きな空間から、
ほんの少しだけ、違う場所に、そっと身を置きたくなるような。
少しだけ、隠れてみたくなるような。
今日は、ふと、寄り道したくなるアーケードのお話。
"パッサージュ・デュ・グラン・セール(Passage du Grand Cerf)"は、
地下鉄、エティエンヌ・マルセル駅を下車し、
北へと歩いていくと、その小さな入口に、ふと出逢う。
その周辺は、特に際立ったモノやお店なども、何も無いのに、
流れている空気は、
いわゆる、「雰囲気がイイよね~」っていう空気。

それは、
ジュエリーショップの前で、
通りすがる、自転車を押して歩く、女性さえも、「画」になるほど。
良いモノさえも、お手軽価格で提供してくれそうな、
ふと入ってみたくなるような、
そんな想像さえさせてくれる、このジュエリーショップの隣に、
このパッサージュ(アーケード)の入口があります。

その”通り”は、いわゆる、日本で想像する商店街とは、別物。
良い意味で、ただ、ただ、整然としている。

アパレル関係の事務所も多く、
その業界の方が、よく利用されることも多いとか。
圧倒的に、ファッション関係のお店が多く、
整然とした空気の中では、
色彩の「ごちゃごちゃ」感が、妙に嬉しくなってしまう。

天井のデザインも、このパッサージュの特徴。
また、この場所は、昔、フランス映画の舞台にもなったそう。
(その映画を見ていないので、あえて、内容は書きませんが)

人生には、時に、空間のポケットに入りたい瞬間がある。
ちょっと、寄り道したいとか。
しかしながら。
そもそも、寄り道とか、回り道・・・って、なんだろう?
何が何でも、
最短で、「目的」という何かに対して、たどり着くことって、
はたして、本当に意味があるのかどうか?
その前に。
究極、
今、自分の中にある、小さな限りある「知識」の中でしか、決定しなかった、
”目的”というものすら、何なのか?
そこに、こだわったり、正しいと決めてしまうことは、どうなのか。
たとえば、人生も旅も、
ある”目標”や”目的”という場所に、たどり着いたところで、
意外にも、「こんなものか」と残念に思うこともある。
たとえば、
人にオススメと言われて、ようやく、たどり着いたレストランも、しかり。
意外にも、その隣にある、名も無きお店の味のほうが、自分に合っていたとか、
そこで偶然出会った人と、友情が芽生えたとか。
また、
目標や目的にたどり着き、そこで、大きな喜びがあったとしても
その後は、またしても、時間は続いていく。そして、再び、変わりゆく。
永遠の維持など、存在しない。

寄り道や、回り道をすることで、何かが見えてくるよ・・・
などと、
一般的に”励まし”と呼ばれる言葉に対し、
自分は、回り道してしまったけど、これでいいんだ、と
それを”頑張って”、思い込ませることも、また、
どこか、正論で無いような気がする。
何が正しい、これが正しいと、決めこんでしまう前に、
心が、自然と、ちょっと寄り道をしてみたい、回り道をしてみたい、と
ふと思う・・・・
そんなワクワクした自分でありたいもの。
そう感じた心を、優先したいもの。
”目標”にしたいのは、
どんな時でも、そんなふうに思える自分なのかもしれない。

◆パッサージュ・デュ・グラン・セール (Passage du Grand Cerf )
Metro :Etienne Marcel
下車して、北上。
入口は、Rue Dussoubs か、Rue Saint Denis