梅家烏鎮に行った翌朝、宿泊先である浙江大学正門前のホテルを出て、市政府の方へ歩いていくと、道の向こうからやって来た女性が突然私の名前を呼ぶ。中国に知り合いは多いと言っても杭州に知り合いは殆どいない。一体誰だろうか。
近づいてよく見るとそれは昨日訪れた梅家烏の茶農の奥さん、徐さんではないか?しかも昨日の質素な服装とはかなり違っており、サングラスを掛けていたこともあり、全く分からなかった。
「なんでこんなところで」という私の疑問を素早く察知した徐さんは早口で「実はこの近くに家があるのよ。子供の学校はこの辺がいいので、家を買って子どもはこっち。私もあれからこちらに戻って、子供の世話。今から銀行行くの。」との説明。
へー、そんなだ。家を買って大学近くのレベルの高い中学に通わせる、学区制は北京と同じである。でも、鎮に住む人は農村戸籍なのでは?そうであれば戸籍が障害となり、都市部の学校へは入れないはずだが??疑問はどんどん膨らんだが、道端のこと、詳しい話も聞けず、分かれてしまった。あー、残念。それにしても徐さんは農村と都市を非常にうまく生きている。中国ではこのような人々が増えているのだろうか。
その日の夜、北京時代の知り合いのお子さんの家庭教師だったという中国人Xさんと会った。彼は山東省出身で北京の名門大学の修士を出ているが、何故か杭州に就職。本人いわく「杭州は憧れだった。北京や上海のような都市で働く気もなく、故郷に帰る気もなかった。」と。うーん、所謂80后世代と言われる若者は私の理解を遥かに超えていた。
彼は宿泊先のホテルから歩いて20分ほどのところにある「一茶一座」という台湾系のチェーン店に私を連れて行ってくれた。このお店は前週渋谷のロフトにある店に行ったばかりで何となく因縁を感じる。勿論渋谷とは全然違う形態で、お茶もあるが食事がメイン。何故かビビンバ定食などを頼む。プーアール茶が付いてきた。不思議。
Xさんに梅家烏に行ったこと、今朝そこの奥さんと再会したことなどを話していた丁度その時、Xさんの背後から私の名前を呼ぶ声が聞こえた。一瞬体が硬直した。向こうのテーブルを見ると女性が手を振っていた。横には中学生ぐらいの女の子がいた。何とそれは徐さんだった。この驚きは表現しにくい。
私と同様、いやそれ以上に驚いたのがXさん。今聞いた話の本人が目の前に現れたのだから、確かにビックリ。徐さんによれば、今日はお嬢さんの塾が遅くなり、ここで2人夕食を取っていると言う。しかもこの店にはめったに来ないと言うから、やはり相当のご縁である。うーん、これはもう次回も杭州に来なければ。