出迎え
空港は周囲に何もなく、ただ銃を持った警備員が警備しているのが目に付いた。外国人だけが登録書を書かされているが、それも直ぐに終わる。特に緊張はない。空気が希薄との印象も受けない。荷物はすべて手作業であり、なかなか時間が掛かった。そして荷物を持って外に出る際、再度チェックがあり、番号の確認が行われた。一応の警戒があるようだ。
外に出ると迎えの紙を持った人々が幾人も立っていたが私の名前は見えない。普段なら慌てるだろうが、朝の10時でもあり、その内来るさ、と言った気楽さがある。ただ紫外線が予想以上に強く、帽子を忘れて難儀だな、と思っていると、尼僧が2人近づいてきた。そうだ、私は尼僧院にお世話になるのだから、彼女らを見付けるのは簡単だったのだ。
尼僧の一人が運転する車で出発。ドライバーは男との固定概念がいけないのだ。そして驚いたことに道を二つ曲がったところで到着してしまった。空港から近いとは聞いていたが、歩いても行けそうな距離だ。
尼僧院に迎えられる
そこには門があり、中はコの字型に建物があったが、真中は工事中。私は何処に泊まるのかと思う間もなく、荷物が部屋に運び込まれる。チェックインなどない。ベットが2つあり、絨毯が敷かれていた。シャワーとトイレもあり快適。
女性しかいない所にいいのだろうか、などと思うこともなく、尼僧さん達も笑顔で「ジュレ(ラダック語でこんにちは、有難う等の意味)と挨拶してくれる。直ぐに部屋にチャイとビスケットが運ばれる。歓迎されている。チャイは美味しい。チベットと言えば、バター茶だが、あれはちょっと苦手。最近はラダックでもインド化してチャイを飲むらしい。ビスケットも素朴で美味しい。しかし食べ過ぎは禁物。高山病対策を取る必要はある。
誰かが挨拶や説明に来ることもなく時が流れる。電気も来ていないので充電もできない。こうなれば休むしかない。それでいい、と体が言っている。横になるとすぐに寝られた。外の強烈な太陽とは異なり、意外と部屋は涼しく、掛け布団を掛ける。1時間ほど寝るともう12時、ランチはあるのかどうかも分からないが、それもそれでいい。
1時頃、当然尼僧さんが一人部屋に入ってきて(これまでもノックなどはなく、皆入ってくる)、ランチを告げる。行ってみると部屋に鍋が2つ。一つにご飯、もう一つにおかず。実にシンプルだが、それでいい。おかずはキャベツを煮たようなもの。これが実にあっさりしていて美味しい。高山病警戒で量を少なくしたが、後悔。
尼僧さん達は外国人に慣れているようで、英語で話し掛けてくる。英語教育がなされているようで、かなり流暢な子もいる。中には「日本は落ち着いた?」などと聞いてくる子もいる。 一人小学生ぐらいの子が混ざっている。服装からして最近来たらしい。どこか動作がぎこちない。恐らくは事情があってここにやって来たのだろう。一人が言う「私達は一生ここにいるだろう」と。