何だか目的を果たしたような気分になる。そして見上げるとオールドパレスが幽霊棟のように聳えているのが見える。一度登ってみるかと思い、道を探す。ようやく細い道に入り上り始めると向こうから降りてくる人が。また会ったね。昨日ストゥーパで急な階段を一緒に登った日本人、実は今朝もスピトクですれ違っていた。2日間で3度目の遭遇。これは偶然ではないかもしれない。彼もそう思ったのか、いきなり道端に腰を掛け、話を始める。
彼はこれまで彫刻の修行をしており、それを終え、独立して仕事を始める前の最後のバックパック旅行とのこと。約2か月間放浪するらしい。彫刻の仕事の足しにするかと思うが、仏像はやはり日本が一番美しいと感じている。ラダックなどチベット系では壁画に魅力があると言う。
昔は神社の修復、家の欄間の作成など、仕事は沢山あった。今は先ずお祭りの神輿の製作・修理とか。将来日本でどんな仕事をするのだろうか。実に爽やかで有為な若者、何だか楽しみである。
さて、再び上り始める。少し急な階段があったが、昨日のシャンティの経験があり、むしろ楽に感じられる。人間とは「人と人の間」という意味だが、実は人と自然の調和ではないかと思う。標高3500mの高地では、自然、環境に順応しないと生きていけない。現在の我々が言う人間社会はまさに人と人とが徐々に順応できなくなってきているような気がしてならない。
オールドパレス、というより王宮跡。建物は市内を一望できる場所にあるが、今や無人で何もない。ところがこんな場所でも外国人料金100rpを取ると言う。この辺りが街である。何層にもなっており、上へ上へ上るだけ。疲れて来る。しかも基本的に風景は同じ。
こんな急な場所で荷物を担いで登るおばさん達がいた。彼女達は建築中の新しい部分へ材料や水を運んでいた。さすがにきついらしく、はーはー息をしている。これだけの重労働をして一体いくらもらえるのだろうか。しかしインドへ来ると女性が重労働に従事している所によく出くわす。そういうものなのだろうか。
ここには寺院が2つあった。ツォモ寺院には僧は常駐していないとあったが、ちょうど一人の僧が中へ入り、太鼓をたたき始める。その様子を入り口から眺めていたら、僧も私に気が付いたが、何分一人。私への対応は出来そうもなかったので、離れる。
もう一つはソマ。こちらはこじんまりしていて、建物の2階、テラス部分に仏像が安置されていた。あまりに小さいので、入るのを躊躇っていると、右手をかなり怪我している少年が、チケットを出してきたので、思わず20rp支払う。中には小さいが壁画もあり、意外やよい感じであった。よく見ると建物の外側にも壁画が描かれていたので、これだけ見ればよかったようだ。