パーリンホー(80后)の鬼才、イケメン郭敬明の悲恋学園ストーリー。先日中国のある地方都市の新華書店の店頭で郭敬明の著書多数が平積みされているのを見て、その人気のほどを理解した。
日本と大きく異なり、中国にはテレビドラマのジャンルに「学園ドラマ」がない。以前北京で理由を尋ねると「学校は勉強ばかりでつまらない」「熱血先生なんてありえない」そして「恋愛ご法度、陰湿ないじめも少ない」と解説されたが。
しかし本書を読むと、多少デフォルメされているとは思うが、「恋愛、妊娠、中絶」「陰湿ないじめ」「家庭崩壊」と既に数年前の時点で上海の高校には「日本化現象(先進国病)」が起こっていることが分かる。そして果てしないほどに暗いストーリーは、経済成長著しい上海にもかかわらず、その明るい未来を感じない若者の現実が表現されていて驚く。また昔ながらの長屋暮らしが垣間見られると同時に、成功したものが引っ越していき、金のある子供が成績優秀者となるなど、中国都市部での格差社会を理解することもできる。
本書を読むことにより、現代上海の現実と問題点が把握でき、またベールに包まれた中国の学校の一面を見ることもできる。画一的な中国情報しか得られない日本では、このような小説により、真の一面を理解していくのも一つの方法だろう。おじさんとしては、本書は実に読みやすい形態になっていて助かるが、単純なストーリーの中で、登場人物が死を迎えなければ収まらない中国小説には違和感を覚える。
尚中国原書の背表紙にも日本語が書かれている他、「ザ少年倶楽部」「かわいい」「NARUTO」「BLEACH」など日本のテレビ番組、アニメなどがちらっと出て来る。80后はいわゆる反日教育世代であり、また同時に一休さんやドラえもんなど日本のアニメを見て育った世代でもあることにも注目して読んでみると何かが見えてくるかもしれない。
訳者泉京鹿さんには「兄弟」(余華著)「水の彼方」(田原著)など多数の翻訳本があるが、毎回現代中国の真の姿を見せてもらっている。次回作にも是非期待したい。
http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2156059