空港までは僅かな時間、沈黙が流れる。突然インドの空港ではチケットがいることを思い出す。Eチケットに慣れた我々は直ぐに忘れてしまうが、チケットなしでは空港入り口すらクリアーできない。慌てて鍵を開けようとしたが、間に合わず入り口到着。しかし何故か車はフリーパスで侵入。ここではお坊さんは信用がある、ということ。
そしてターミナル入口。P師が付いてきてくれたが、ここまで。有難う、すら言えない内に中に引きこまれる。何だか全てが終わったような気分になる。気を取り直して、チェックインへ。多くの人が並んでいる。カウンターは2つしかない。ここでP師の言葉が頭をよぎる。「急ぐ必要なんかない。ゆっくりやりなさい」
いつもなら、どちらのカウンターが早いとか、イライラして待つのだが、今日は完全に無の境地?もう一つのカウンターが相当早く手続き出来ているのを見てもゆっくり待っていた。そうしたら何とチェックイン最後の1名になってしまった。だが、カウンターの女性が「ビジネスクラスにアップグレードします」というではないか。何だかいきなりのご利益に仰天。
今回は比較のため、ジェットエアーを選んでいた。好感度は急上昇。というか、いつものようにちょろちょろせずにいたことが、この結果か。そして手荷物チェックを経て、待合室へ。出発時間より早く何回かアナウンスがあったが、気にせずにいる。しかしどうも変だと思い、係員の居る外へ出てみた。するとそこには何とさっきチェックインした私の荷物が2つ、取り残されていた。何かまずい物でも入っているのだろうか?
係員がチケットを確認、そして荷物に印をつけて終了。ようするにチェックインした荷物が本当に搭乗する人の物か再チェックしていたのだ。そこまでするか、と思うと同時に、やはりここは国境紛争地帯の一つなのだと再認識。これまでの穏やかな生活の陰で、全く危険が無いとはいない状況もあると言うこと。
更に搭乗時には再度手荷物検査、バスで移動する際にもボーディングパスの検査。そして搭乗時にも再検査と、都合5回のチェックがあった。いや、空港入り口で検査が2回あったから、合計7回ものチェックを潜る。国内線でここまでやる地域は珍しい。
座席は一番前の窓際。離陸時からラダックの余韻に浸る。上空でもあそこが、スピトクなどと地名を思い出し、何故か感激。ジェットエアーは格安航空会社ではあるが、キングフィッシャーより何となく雰囲気が良く、CAも美人ぞろい。段々俗世に引き戻される。
隣のインド人が話し掛けてくる。「お前の持っている本は中国語か、日本語か」何故そんなことを聞くのかと思えば、彼は中国語を半年勉強したのだと言う。それで本の漢字に反応したらしい。ラダックにオフィスがある、と言っていたが、何の会社だろうか。中国語学習は仕事ではなく遊びだと言っていたが、本当だろうか。インド人にも中国語ブームが来たのだろうか。
飛行機はあっと言う間に下界に降りてしまった。僅か50分で、私のラダックは全く視界から消え去った。 (完)