夜はデリーの大学教授M先生のお話を伺った。M先生は日本語の教師と言うことで紹介を受けていたが、お会いしてみると、日本語は実に堪能であり、かつ専攻は近代日本史、特に明治末の思想。また最近に日本企業のグローバル化を研究しているとのこと。
昨日日本から戻ったばかりだとは聞いていたが、某大学に客員教授として呼ばれ、何と2か月半も日本に滞在していた。何という偶然か、まさにドンピシャなタイミングでお会いできたわけだ。しかもわざわざホテルまで迎えに来てくれ、そしてご自宅に招いてくれた。
以下M先生の言葉。
「日本企業のトップは分かっているが、下が着いて行かない」
「雇用を維持して日本の技術の良さを出すためには、日本国内で薄利多売生産しかない」「日本人は日本が必ず再生すると信じている。しかし誰がやるかは明確ではない」
「あと10年すれば日本の技術の優位性はなくなる。その時中国・韓国には勝てない」
「タタの会長は来年引退。海外利益が65%の企業グループ、当然次期会長は海外から招へい。現在今後20年できる人を募集中。日系企業は・・」
「日本企業の研究拠点は本社中心。グローバル企業は世界の数拠点で並行して開発を行っており、ニーズの取り込みのスピードが違う」
「韓国企業は技術的に優れているとは思わないが、冷蔵庫、洗濯機のインド市場を独占した。日本企業に出来な訳はない」
至極もっともなお話ばかり。先生は日本滞在中に何度も企業経営者などを前に講演したと言うが、反応ははかばかしい物ではなかったらしい。「分かってはいるけれど、出来ない」ということが、日本には多過ぎると感じられた。
厳しい話ばかり書いてきたが、先生は実に温和な方で、話し方は上品。夕食も私の為に、奥様が家庭料理を作ってくれた。それにしてもインド人から「明治末の思想」「水平社」「幸徳秋水」などの言葉が出る度、正直唖然となる。今や日本人でこのあたりを語れる人はどれほどいるのだろうか。文化人と称している人でも難しいのではないだろうか。
そばでは先生の愛犬が常に吠えていた。2か月半も留守にして、更に今日もおれを構わないのか、といった不満が爆発していた。そういう意味では奥様や息子さんも同じだったはずで、その中を招いて頂いたことには実に感謝したい。