中国の新疆と言えば、シルクロード。ちょうど私が大学に入る頃、NHKが「シルクロード」という番組を放映し、改革開放政策と相俟って、大ヒットを飛ばした。あの喜多郎の雄大な音楽と石坂浩二のナレーションは未だに耳に残っている。中国ブームのはしりだ。
どうしても新疆に行きたい、いやシルクロードを辿ってみたい。その希望は何度も打ち砕かれてきた。1987年上海留学の最後に計画した西安‐カシュガル横断旅行は、仕事でダメになった。2000年、北京在住中には、内モンゴルにはよく行ったが、それより西に行く機会は訪れなかった。
2007年に再度北京に住んでからは、兎に角毎年夏になると計画した。しかしその度に、航空機爆破未遂、ウルムチ暴動などが発生して、旅行は中止になった。辛うじて西安に初めて行き、蘭州にも行った。こんなメジャーな都市にこれまで一度も行かなかったのかと、友人には笑われた。しかし個人的には「新疆は老後の楽しみ」と割り切り始めていた。
今年に入り、お世話になっているA大学のN先生より、「夏の辺境調査は新疆だ」と聞き、俄然行く気になった。幸い会社に行かなくなり、時間は自由になった。この辺境調査、単に辺境に行くだけではない。各地の政府、大学、工業団地、企業などを訪問し、話を聞く。これまで広西壮族自治区、ウランバートル、延辺朝鮮族自治州の調査に同行しており、その有意義な様子は理解している。イメージと違った新疆が見られるかもしれない。
北京からウルムチまで33時間を列車で行く、というN先生に最初から同行することにした。しかし夏の新疆は旅行のハイシーズン。結局列車の切符は取れずに飛行機で行くことに。ちょっと残念でもあり、ホッとした面もある。やはり体力の衰えを自覚し始めている。