M先生が博物館に行きたい、ということで、市内中心にある自治区博物館へ。北京時間4時までに入場しないと閉館と聞き、急いで行く。現在中国の博物館はどこも無料。これはとても嬉しいサービスであるが、中には参観者が多過ぎて困る所もある。
ここは閉館間際でもあり比較的空いてはいたが、それでも団体観光客が多数いた。我々は勝手に参観しようと思っていたが、J氏はどこかへ消え、何かを探している。10分ぐらい待つと、何と日本語の若い女性ガイドさんが登場。13の少数民族について詳しく解説を始める。
私が注目したのは中国東北地方から清朝時代に移住させられたシボー(錫伯)族。実は中国では既に満州語は死語となっており、満州語が読み書きできる人々はかなり限られている。満州族はとっくに漢族化してしまったと言うこと。清朝時代の資料もある程度は漢文で書かれているようだが、勿論満州語で書かれている物もあり、現在この資料が読める唯一の民族として、中央政府もシボー族を北京に呼んで、解読に当たらせていると聞いたことがある。何だかとても不思議な話だが、中国の少数民族を考える場合、示唆に富むエピソードかもしれない。
そしてこの博物館のメインは「楼蘭美女」。約3800年前に埋葬された女性のミイラであるが、その保存状態の良さなどは驚くべきものがある。1980年にタクラマカン砂漠の東、楼蘭鉄板河遺跡で発掘され、世界を驚かせた。NHK特集シルクロードでも放映され、鮮烈な印象がある。
ガイド嬢が「楼蘭美女は出張中です」と残念そうに、そしてちょっとユーモアを持って宣言する。中国国内の他の博物館に貸し出されている。しかしこの博物館には他に2つのミイラがある。おばあさんと男性である。楼蘭美女は美女と言うのに、隣はおばあさん、彼女が言うには「楼蘭美女は身分が高い女性、このおばあさんは普通の女性」だそうだ。死んでも身分を問われるとは何となく悲しいが、歴史的な遺産としては大事なこと。男性のミイラは張さんと言うらしい。これはこれで面白い。
このガイド嬢、聞いてみると今年大連外国語学院日本語学科を卒業して、ウルムチにやって来た。小声で「新疆のことはまだよく分かりません」と言うのが初々しい。今日は日本人のお客さんも多く、我々が5組目とか。最後はかなり疲れていたが、元気に手を振って見送ってくれた。それにしても人材不足の新疆、内地(新疆では中国他省をこう呼ぶ)から沢山の若者がやって来ている。