そのレストランは1階と2階に分かれており、1階は庶民的、2階は豪華な感じであった。我々は真っ直ぐ2階へ。しかし2階ではちょうど従業員のミーティングの最中。開店前に入ってしまったらしい。外国人だからだろうか。
実はこのお店、S氏の知り合いが経営者であった。その経営者はやはりウイグル人で、しかも大阪に留学していたという。帰国後大学で教えていたが、辞めて友人とレストラン経営をはじめた。経営は順調かと聞くと「ボチボチですね」と日本語で答える。実に落ち着いた雰囲気。日本の料理を参考にしたか、と聞くと、サラダにわさびを入れただけとか。このサラダ、後で食べるとなかなか美味しい。
ようやく従業員が動き始めた。先ず大皿にスイカとハミ瓜が運ばれる。このハミ瓜は日本のメロンのようで本当に美味しい。どうしてこれを日本に輸出しないのか、と食べた人は皆思うフルーツ。ハミ瓜にかぶりつく。これは美味い。スイカも大きく切られていて、甘い。取り敢えず料理の前のフルーツ。そしてなぜか主食の麺が登場。
このラグメン、という名前の麺。麺にこしがあり、かつ上にニンジン、トマト、などの具を炒めた物を載せて、かき混ぜてから食べる。実に美味しい。まるでスパゲティーのようだと言うと、J氏が高らかに言う。「スパゲティーをイタリア人に教えたのはウイグル人である」、なに、それは初耳だが、確かにこの麺と具はスパゲティーである。説得力あるなあ。
更にJ氏は続ける。「ピザもイタリア人に教えた!」、えー、それは・・。しかし確かにピザの生地はある意味ではウイグル人がいつも食べるナンである。具もスパゲティーと同じような物か。それにチーズは山羊のチーズを使えば・・、ピザもできるね。これは驚きである。
そしてシシカバブ‐が登場した。このカバブー、羊の肉が実に柔らかい。塩味も程よく聞いている。うーん、この店は実にウマい。東京に出店欲しい、と伝えたがオーナーは、「日本でのビジネスは難しい。材料もない。ウルムチで十分」と断られた。
そして周囲を見てみるとビックリ。いつの間にか日が落ち、お客さんが集まっていた。皆いい服を着て、社交場のように集まっている。女性が多い。S氏によれば、「男性はラマダン中、各人の家に集まり、毎日宴会をしている。女性たちはレストランにやって来て、食べている」うーん、ラマダンのイメージは崩れる。面白い。
外へ出るとまだ完全には暗くなっていなかった。突然大きな音がした。道路を見ると車がぶつかっていた。そのぶつかり方が普通ではない。道のど真ん中で、前の車が急に左に曲がり、後ろの車がその横腹に突っ込んでいる。どうしてこうなるのか。両方の運転手が言い合いをしていたが、何故か警察は来ない。その内話が着いたのか、両車は何事もなかったように走り去った。