(3) アラシャン口岸
我々は何故博楽にやって来たのか、正直ここに見るべきものはない。それは今回の調査の主眼である辺境調査、ようは国境へのアクセスの為である。カザフスタンと国境を接するアラシャン口岸は博楽から40㎞の距離。朝からそこを目指して出発する。同行する地元の人も別の車で先導してくれる。
バスは順調に進み、国境近くの検問所にやって来た。流石中国の国境、かなり厳しい検問だなと待っていたが、我々の車だけが一向に通過できない。他の車が去るのを眺めながら嫌な予感が走る。
それから少しして、ようやくバスが動き始めた。よかった、関門を越えたと思ったとたん、道に脇に駐車していた車から若者が手を振り、バスを止めた。バスに乗り込で来た険しい表情の若者は誰であろうか。ウイグル人であるらしく、J氏、S氏とウイグル語で話していたい。途中で急に両者の声が和んだ。何と財経大の卒業生だと言うのだ。
では、これから先は何とかなるのだろうか。そう簡単に事は運ばなかった。我々のバスは若者の先導で、公安に誘導され、そこで「口岸付近を1周すること、駅前広場と土産物売り場への立ち寄り、写真撮影」が許可されただけであった。調査どころではない。というか、こんなに厳しいのに、辺境貿易が正常に行われている訳がない。
土産物売り場にはロシア製品と思われるチョコレートや工芸品、衣服などが置かれていた。売り子の英語は片言。基本は中国語を話したが、お客は殆どいなかった。駅も表示を見るとカザフからの国際列車が一日1-2本通過しているようだが、人気は全くなかった。貨車が中心であろうか。街を1周したが、普通の街と変わりはなかった。ただ人が殆どいなかっただけ。我々は記念写真を撮り、早々に引き揚げた。
最近カシュガルやホータンで、テロ事件が発生していた。この件と関係があるのだろうか。説明は一切ない。兎に角過敏になっていることだけが分かる。この結果、明日行くはずだったもう一つの国境、コルゴスへの訪問も断念した。新疆の厳しいさを見た。
皆ガッカリしながらバスに乗る。近くになった皮革工場にはアポが入っており、案内してもらえた。しかしどのようにしてこの場所を確保できたのかなどの疑問には曖昧な答えのみ。やはり国境には複雑な事情がありそうだ。