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2011.12.01

 旅行記(中国)

新疆北路を行く(36) 感激のもてなし 十二ムカム

(6) 感激のもてなし 十二ムカム

工場のあまりの規模に圧倒され、早く伊寧市に戻りたいと思ったが、前の車が先導してどこかへ行く。確か前には女性が乗っていたような、あれは誰だ。


街中へ行く。ある家の前に車が停まる。何でもモデルハウスだと言う。何のモデルハウスだろう。きれいな庭にきれいな家、貧困の村を救う政府の政策だろうか。説明を聞き損ねたので詳細は分からない。


彼女の正体が分かった。何とこの県政府のトップ常務委員さんだった。まだ30歳代ではないだろうか。ウイグル族出身の彼女は苦労して天津の南開大学に進み、地元に戻ってからは、党学校の教師をしていたらしい。それが先日抜擢されてこの県に赴任してきたとか。新しい力が必要なのであろう。

食事の場所として連れて行ってくれたのは、閑静な庭園を持つ、リゾート風宿舎。池などが配されたその庭を歩いて行くと、大きな屋根の下に桟敷がある。絨毯も敷かれている。この自然空間の中でご飯を食べる、と想像しただけで嬉しくなるような場所であった。更にその桟敷には先客が3人いた。県のお役人だろうか、などと思っていると、常務委員が「彼らはウイグル伝統音楽の奏者です」と紹介。確かに脇には楽器らしきものが置かれていた。

話の中に「十二ムカム」という言葉が出て来た。1547年、音楽と詩歌をこよなく愛するアマンニサと言うウイグル女性が新疆ヤルカンド(現在のカシュガル地区莎車県辺り)にあったヤルカンドハン国の王妃になり、多くの楽師やムカム音楽家を集め、大規模な整理作業を行い、その規範化を実現。歌詞の中にあった難解な外来語や古ウイグル語の単語、さらには古い宮廷詩的修辞などを取り、完全且つ厳密な構造体系を持ち、口語的で分かりやすい全く新しいムカムを誕生させた。

19世紀にはムカムはしだいに12曲の組曲に編成され、一曲ごとの組曲の演奏には約2時間を要した。この洗練されたムカムが『十二ムカム』である。従来は師匠から弟子への口承のみであったが、新中国ではそれを録音するなど保存に努めている。



その演奏は見事であった。日本人と言うことで、すばるや赤い絆など、日本の曲も披露された。やはりプロである。「日本にはもったいない、という精神があると聞いた。コーランの教えにも同じ物がある。相通じる」そして我々の希望を聞き入れ、食事の量を少量にしてくれた常務委員さんの心遣い、とても嬉しくなってしまった。爽やかな風が吹き抜ける桟敷の上で強かに酔ってしまった。