車は南へ進路を取り、高速をスムーズに走る。何だかその昔来たような道だが分からない。20分ほど行くと、リゾート地、といった感じの家々が並ぶ。その中へ入る。実に広々とした敷地、木々が溢れ、南国の別荘である。
目的の家は広大な敷地の中にあり、なかなか見つからない。運転手も何度も場所を聞き、ようやく探し当てた。タウンハウスの2階建て。1階には各家に駐車場もある。その1つを恐る恐るドアをノックすると、隣だと言われる。隣をノックするとインド人が顔を出す。
ディープ、それが私が訪ねた人。インド出身でありながら、KLにやって来て、ヨーガを教えているという。彼は30代半ば、実に柔らかい笑顔で迎え入れてくれた。広ーいリビングがあり、その向こうにはベランダが。そこから池が一望でき、とても心地よい空間が広がる。如何にも自然に生きている感じがする。
ディープは東京でヨーガを教えているHさんの紹介。何でもインドのヨーガ学院で一緒だったとか。当時からイケメンで女子には人気があったらしい。特に何となく当たりの厳しいインド人が多い中、彼の優しさは受けたことだろう。その彼がなぜKLに来たのか。それは彼女がKLに住んでいたからだそうだ。KLにヨーガ教師の仕事を探し、契約した所で、その彼女はいなくなってしまった。後にはヨーガの契約のみが残った。仕方なく、ヨーガを教え始めた。
そしてそこで今の奥さんと知り合い、結婚。現在は自らヨーガ教室を主宰し、この別荘地内で教えている。朝はヨーガをやり、昼間は教室、暇な時は読書、食べ物は自分で調理。実に理想的な生活をこの歳で送っている。素晴らしい。「インドより遥かに快適な空間がある」という言葉には、重みがある。
今回彼は早朝到着する私を気遣って、「家で朝食を食べよう」と言ってくれていた。有難い。彼自身が、スクランブルエッグ、トースト、ヨーグルトを準備してくれ、美味しく頂く。油は控え、基本はベジタリアン。「食べ物が体を作る」「心を穏やかにするのは環境」と静かに話すが実に説得力がある。心穏やかな生活が垣間見える。
彼は仏教などについてもよく勉強していた。「ブッダの教え」などはない、あれは弟子が聞いたというものを纏めただけ、と言ってのける。宗教がビジネス化していることを嘆く。そういえば、この家にも観音様がある。奥さんは中華系。彼は奥さんの宗教もよく理解している。
帰りがけに、彼のスタジオを見学。彼の車はダイハツ合弁の新車。「これならあまりお金が無くても買える」とのこと。乗り心地はまあまあ。スタジオまで2-3分で到着。華人の家の1階部分を借りているそうだが、庭もあり、気持ちの良いスタジオであった。ここで爽やかにヨーガをやれば、効果も抜群かと思う。
更に数分行った家に入る。大きな別荘だ。オーストラリア人が所有しているが、ヨーガ合宿を実施する際は、この家に皆泊まり、ヨーガもここで行うらしい。部屋は沢山あり、大人数が収容可能。食事はここのお手伝いさんが作るとのことで、大きなキッチンもあり、家の外と内と両方で食事が出来るテーブルがあった。プールもあり、広いリビングで寛ぐこともできる。良いスペースだ。一度ここでヨーガ合宿をやってみたい。