翌朝は晴天。思ったより暑い。朝5時には鶏が鳴き、5時半には家族が起床。釣られて私も起床。庭には鶏やヒヨコが歩いており、近所の家でも洗濯などが始まる。実に生活感がある。朝ごはんはパサンが作ってくれる。シェルパは食事作りが仕事の一つ。
9時にパサンに連れられて工場へ行く。先ずはここの4代目茶園主、ラジャ・バナジー氏に挨拶に行く。彼が今回のキーパーソンであり、いきなり会えたのはラッキー。ところが今回の来訪目的を述べたその時、彼の携帯が鳴り、中国人グループの来訪が告げられた。話は5分で中断されてしまう。そして私はパサンに連れられ、茶園見学へと向かう。何だかちょっと残念。たった5分の対面だったが、なかなか面白い人物との印象を受ける。
次にベルギー人の男女3人も同行し、近くの茶園へ降りていく。彼らは実に自由に旅をしており、気に入った場所に長く泊まり、動いて行く。一人は女性でインド、ネパール、タイなど半年旅行を続ける予定とか。確かに気分次第で動いて行く旅が結局は自分の為でもあり、また安上がりなのだろう。旅の仕方を考えさせられた。
急な坂を下り、茶園に入る。パサンは慣れているのでお構いなしにどんどん進む。着いて行くのが大変。茶木がそこここに自由に植えられているのが印象的。また蝶や虫、クモなどが沢山いるので、化学肥料は使われていない様子がうかがわれる。
かなりの霧が掛かっていたが、晴れて来た。向こうの山を見ると山肌の色が違う。どうやら向こう側では化学肥料が使われているらしい。こちら側には木があり、草があり、花が咲いているのでよく分かる。茶園の急斜面では所々で茶摘みが行われており、その大変さは坂を下っている我々にはよく分かる。
実はこのグループには8歳の少年が同行している。彼はちゃんと水を持ってきており、全員に配ってくれた。少年はベルギー人の担当。彼らの会話を聞いていると父親を亡くしており、その代わりを務めているらしい。今日は学校が休みなので同行したのだろうが、既に彼はガイドの訓練を始めている。この地域の厳しさと暖かさを少し垣間見た。
パサンは何かに憑かれたかのように、坂を下る。何か目的地があるのだろうか。相当下った所に小屋があり、中を見ると何と赤ちゃんがゆりかごに入れられて寝ていた。ベビーシッター役にお婆さんが面倒を見ていた。仕事中に子供を預けられるシステムが存在することも分かる。
8歳の少年はどこかに使いに出された。暫くすると一人の青年を伴ってきた。青年は隣の小屋のカギを開け、中を見せる。そこは紙工場であった。どうやらベルギー人が希望して見学するようだ。よく見ると茶の外箱に使う紙も作っている。ここはマカイバリ茶園に必要な紙を作っており、余った物で観光用にはがきやノートも作成していると言うことだ。必要な物は自前で作る、これも面白い発想だ。