ミーソン見学を終わると我々はボートトリップに出掛けた。これはオプション。参加者は中国人4人、シンガポール人夫妻、そして西洋人は4人だけで、形勢は逆転した。ボートは小型だが人数が少なくゆったりと座れた。食事は実に質素なご飯にキャベツなどの野菜炒めを乗せたもの。私などはそれでいいが、西洋人にはちょっと辛そうな食事。
私の前には一人で参加しているフランス美人が座っているが、何かと神経質そうに、いや何かにおびえたような仕草をしている。缶ジュースが開けられず、手伝ってあげるとにっこり笑ったのが印象的。そういえばこのジュース、無料かと思ったら、しっかり20000ドン請求された。そして後から付け足したように無料の水が配られる。これが彼らのかわいい作戦だ。
なかなか出発しないので、おかしいと思っていると、そこへイタリア人の老人6人が乗り込んできた。彼らは非常に陽気で、おしゃべりも盛ん。さっきまで中国人はうるさいな、という雰囲気があったが、イタリア人がうるさい分にはあまり気にならないから不思議。ご飯をパクパク食べながらも、笑い合っている。年頃なのだろうか。
ようやく船が出た。すると待ち構えていたかのように、雨が降り出した。最初は小ぶりで2-3分で止むものと思っていたが、途中から激しい雨となる。べトナムを長く旅している西洋人達は一斉に雨合羽を取り出す。中国と私は慣れていなかったので、傘を取り出したが、屋根があるとはいえ、横風に吹かれた雨は傘では凌げない。諦めて濡れていると、シンガポールが夫婦の合羽の一つを貸してくれた。有難い。
中国人のリーダー格は雨を物ともせずに、いややせ我慢で、立ち上がり、濡れながら写真を撮り出す。するとイタリア人の爺さんも立ち上がり、写真を撮る。とても奇妙な連帯が彼らの間に生まれた。皆笑いながら、見ている。実に不思議な光景であった。一気に場が和んだ。
雨も止み、ホイアン近くまで戻る。本当は村に立ち寄り、その生活を見る予定であったが、雨のために中止して、ホイアンに戻ると、ガイドが告げる。私などは当然かなと思って聞いていたが、イタリア人老人軍団は黙っていなかった。口々に村へ行きたいと叫ぶ。恐らく中国人が文句を言っても押し切ったであろうガイドもこの攻撃には屈し、我々は村へ向かった。老人たちは勝利の雄たけびを上げた。
イタリア人は中国人よりうるさい、と今回は言える。しかし不快ではない。しかもうるさいだけではなく、しっかりとした主張もしていた。これは面白い。