6時過ぎにホテルに戻る。結構疲れているので早く寝ようかと思いながら、ネットを繋げ、何気なくFacebookを見ると、「今ホイアンに居るのか」と北京のMさんから書き込みがあった。それがどうしたと書き込むと「折角だからゲンタさんの店に行け、名前はサムライ食堂」と返事が来る。
一体、どうなっているのか、ゲンタさんって、誰、サムライ食堂??それでも行けと言われれば行くのが私の旅。今夜の予定は特にないので、急いでサンダルをつっかけて出掛ける。場所は日本橋の北1分、とある。狭い街だ、直ぐに着く。
日本橋とは、日本人町が形成されていた1593年、日本人によって建てられたと言われている橋。木造で少し沿った形は日本的だが、中国風に屋根が付いた橋である。正式名称は来遠橋であり、日本橋は俗称のようだ。
サムライ食堂は橋の袂、川沿いにあり、直ぐに分かった。何だか暖簾が掛かっているが、外から見ても涼しげな佇まい。古い建物を使っているようだ。早い時間でお客は誰もいない。店にも誰もいない。どうしたんだろうか、奥まで入り込む。
裏に事務所スペースがあり、人の気配が。声を掛けるとそこにゲンタさんはいた。Mさんの紹介で突然来たと告げるとかなりビックリしていたが、それでも快く迎えてくれた。お店に座ってお話を聞く。
若い時は大阪のホテルでウエディング関係の業務をやっており、カナダにも1年行った。リーマンショック後退職。日本に違和感を持ち、転職せず。テレビ番組で偶然見たホイアンに一目ぼれ、直ぐにやって来て2週間滞在してステイ決める。ベトナムは初めて、かつ飲食業の経験もなかったが、ホイアンに住みたい一心で両親から日本食のレシピを習い、練習を重ねて、偶然いい人々と出会ったこともあり、お店を出すことになったという。何だか信じられないような話だが、本人が目の前で話している。
この街にはスペイ人で店を開いている人などもおり、助けてくれるという。ベトナム人の信頼できる人とも出会い、店の場所も決まり、従業員もすぐ見つかった。ただ仕事より家族を大事にする従業員に最初は戸惑いがあったという。私が訪ねた日も急に休みを取ってしまったようで、店にはゲンタさんしかいなかった。従業員には仕事が出来れば10万ドンずつアップするなど、工夫して何とか働かせている。
この街の良さは「景観を大切にする街」だと。実際店の壁の色も決められているそうで、確かに店も街全体も落ち着きを持っている。これは欧米のNPOなどが働き掛けてその環境を守ったそうで、ベトナム人も感謝する必要がありそうだ。
ホイアンには日本人は殆どいない。また日本人観光客は来るが宿泊する人は少ない。では一体誰がお客さんなのか。ベトナム人には日本食は高い、欧米人がやって来る他、中国人なども来る。日本人はダナンから週末来る人もいるし、夕飯をここで取る人もいるようだ。まあ、ボチボチやっているということか。
将来もずっとホイアンに住みたいというゲンタさん。今はベトナム人、出来れば地元の女性と結婚したいとも語る。ホイアンに一目ぼれ、この街の良さは十分に分かるが、このエネルギーは並大抵のものではない。日本人にも様々な人がいると実感できる。紹介者Mさんに感謝せねば。