(6) 駅まで大トラブル
ホテルに戻り、チェックアウト。これから列車でフエに行くので、ダナン駅までタクシーで。フロントでタクシー料金を確認したが、客だというのに誰一人タクシー拾ってくれようとはしない。ちょっと嫌な感じがあったので、ホテル前に停まっているタクシーを避け、流しを拾う。
ところがホテル前のタクシーが流しに声を掛け、強引に私を乗せる。何故だ?「ダナンステーション」と言ってみたが英語が分からないらしい。それではと降りようとすると、彼は慌てて携帯に電話。英語のできる人間に替わったので目的地を伝え、出発。
運転手のニーちゃんは決して人が悪そうには見えない。まあいいか、と乗っていると、どうみても駅を通り越している。英語で伝えるも、「分かっている」と車を停めようとしない。そして・・、到着したのはバスターミナルだった。違うと首を振るとニーちゃんが困ったように携帯に電話する。電話の相手にバスではなく、列車だと伝えると、慌ててニーちゃんと替わり、了解する。が、そこで初めて、ニーちゃんに地図を見せた。だが、良く考えてみれば最初から列車のチケットでも見せればよかったのかもしれない。
列車の時間が迫っている。タクシーは滑るように駅に入る。料金メーターはホテルで言われた2倍以上の10万ドンになっていたが、当然5万ドンだけ払い、立ち去ろうとする。ニーちゃんが何か喚いたが、こちらも時間がなく、交渉の余地はないと首を振る。
駅に駆け込み、ホームを確認。ちょっと遅れているらしく、列車の姿はまだない。そしてホームへの案内はまだされていない。仕方なく、ベンチに腰を下ろす。と、その瞬間、入り口から数人の男たちが入って来て私の方へ近づく。先頭にはあのニーちゃんが。これはちょっとヤバいかも、と思い、万が一に備えて、駅員の位置を確認する。
ニーちゃんが私を指さすと年配の男性が実に流暢な英語で「何があったか話して欲しい」と言う。私が経緯を述べると、年配のおじさんはニーちゃんに向かって、ベトナム語で何かきつい言葉を投げている。
そして再度私に向かい、「事情は分かった。確かにこいつが悪い。だがこいつも騙すつもりはなかったんだ。こいつにも生活がある。今回は私の顔に免じてもう少し払ってやってくれまいか」と言うではないか。その堂々とした物腰、物言い、何故か感動してしまった。彼はこの辺りの顔役、やくざなのかも知れないが、その慣れた捌き、流暢な英語に思わず、2万ドン出していた。おじさんは「悪かったな」と再度言い、皆を引き連れ、堂々と駅を去って行った。ベトナムでは兎に角トラブルが多い。当然それを解決する役目を追う人間がいる。ちょっと面白い物を見た。