(5) 夕暮れ
良い風景を見た後は心が洗われたのだろうか、王宮付近の夕暮れが一段と映える。帰りは道が分かっていたので、敢えて歩いて戻ることにした。夕方の帰宅ラッシュなのか、大量のバイクが轟音を立てて過ぎ去る。
再度橋を渡る。バイクに乗っていた時とはまるで感じが違う。橋の上は広く、そして川はゆったりと流れる。夕陽が静かに、静かに落ちていく。もうバイクの音は気にならない。完全に自分だけの世界に入っていった。ただただ川を、そして夕陽を眺めるだけ。相当に時間が過ぎていく。
ふと振り返ると、私の後ろにランニング姿の欧米人男女が立っていた。彼らは夕暮れ時を走っていたようだが、何とその目に涙が流れていた。分かるなー、その気持ち。聞けばドイツ人だという。夕陽に関する会話は一言もなかったが、完全にお互いが共有しているものがあった。こんな触れ合いは素晴らしい。
更に河沿いを歩いて行く。低い建物がゆったりと広がっている。ホイアンのような観光風景はなく、ただ古めかしい街、という雰囲気だが、それはまたそれでよい。
ホテルでしばし休息。午後4時に食事をしたので、腹は減らず、そのまま寝ようかと考えたが、早過ぎる。暗くなった周囲を散策。ホテルの対面の道を入って行くと、安宿街があり、その向こうには欧米人が好きそうなバーなどもある。
何となく小腹がすき、屋台でフォーを食べる。ホイアンでは朝しか食べられなかったので、嬉しい。ベトナムではいつでもどこでも美味しく、食事がとれる。素晴らしい。