(8) スペイン語は出来れば
昼は一度市内に戻る。このツアーがやっているカフェでビュッフェのランチ。皆さん、思い思いに席に着き、楽しそうに食べる。意外なほど、豊富なメニュー。私は一人なので、例のガイド氏と食べたいと思ったが、彼はその申し出を巧みにかわした。え、多分、ガイドはお客と一緒に食べてはいけない規則でもあるのだろう。
というのも、彼はガイドの合間に私の所に来て、日本語を聞いていたから。ここ半年間、日本語を独学しているらしい。その語学能力も高そうだ。夜、仕事が終わってから一人黙々と教科書に向かう日々だという。努力している人たちがいる。「日本語が出来れば仕事の幅が広がるから」というが、恐らくは日本人のガイドになった方が実入りが良いのだろう。何しろ日本人は英語ツアーなどには入らず、高いお金を出して日本発のツアーに参加する。チップもくれるだろう。
一人でご飯を食べ終わると、組み分けが行われた。王宮に行く組と行かない組み、私は昨日王宮に行っているので行かない組へ。スペイン人の夫婦とイタリア人の女性と同じテーブルへ。彼らは勿論英語が出来るのだが、話が少し込み入るとスペイン語になる。そして私の方を向き、「どうしてスペイン語を勉強しなかったの」と無邪気に笑いながら聞く。ところが私は内心ドキリ、実は30年前大学の第2外国語で一時スペイン語の勉強をしていたのである。しかし残念なことに、一つの単語も浮かばず、話にもならない。ヨーロッパ勢はいくつかの言語を巧みに操る。羨ましい。