(10) 洗濯トラブル
ツアーを終えて、ホテルに戻る前に、洗濯物を取りに行く。昨日出しておいたものだ。東南アジアではバックパッカー向けに1㎏単位でランドリーが頼める所がある。これは私のような者にも大いに助かる。コインランドリーを自分でやらなくてよい、畳まなくてもよい、という感じだ。
今回は1㎏あたり4万ドン(2ドル)であった。ところが取りに行くとお婆さんが8万ドンを請求してきた。「これは通常のランドリーで洗ったから」などと言い、個別金額を請求してきたのだ。
お婆さんとは昨日も言葉が上手く通じず、横に居た若者に補助を頼んでいたのだが、案の定、通じていなかった。いや、外国人相手の商売だ、わざと分からない振りをして請求しかもしれない。
こちらとしては言われなき請求に応じるのはどうも納得がいかない。そこで昨日の若者を探し出すと、隅の方で小さくなっているのが見えた。トラブルになっていることに気が付いているようだった。彼を引っ張り出し、英語で確認した。彼は素直な性格で直ぐに4万ドンを認めた。
しかし今度はお婆さんが納得しない。とにかく普通に洗濯したのだから、料金を払えという訳だ。こういう時に悩む。料金は正直大したことはない。しかも相手は老人だ。どこまで自分の主張をするべきか。今回はじっと黙ってしまった。テーブルの上には4万ドンが置かれている。暫し無言の時間が流れた。お婆さんが大きなため息をつきながら、4万ドンに手を伸ばし、「お前の顔など見たくない」と言った顔をした。交渉は呆気なく終了した。
夕飯はチキンライスを探した。外国人向けの綺麗なレストランが沢山あり、欧米人がビールを飲みながら、楽しそうにしている中、何となく浮かない気分の私は場末の大衆食堂に入った。食事は美味しかったはずだが、何となく気分的に落ち込んでしまった。