(2) BG機内で
機内はガラガラだった。3人掛けの深いグリーンのシートに一人で座る。S氏が「今日はなんてラッキーなんだ」と囁くのが聞こえた。このBGのバンコック→チッタゴン線が定刻に飛んだのは、彼の長い経験でも今回が2回目だと言う。遅れるのが当たり前路線だった。私の荷物事件にもかかわらず、十分すぎる余裕時間のせいで本当に定刻にテイクオフした。
機内には我々の一団、日本人が16人。後は西洋人の女性が一人で、残りはバングラ人。日本の大学生は実に積極的にバングラ人との交流を展開。機内は英語と笑い声、そしてカメラのフラッシュに包まれる。
私の横にも一人のバングラ人が「話してもいいか」と英語で言いながら座る。聞けば、チッタゴンの大学の准教授で、バンコックでの会議の帰りとか。このグループは10名。洪水でサファリパークが閉鎖されたなどと言っていたから、観光も入っていたのだろう。
彼によればバングラ経済は急速に成長しており、チッタゴンにも韓国、インド、中国などから投資が入ってきていると言う。その分、物価の上昇も激しく、一般庶民は大変だとも言う。どこの国も同じような状況だということ。
2時間の飛行時間で、1時間が過ぎて、ようやく食事が出た。ベトナム航空国内線のトラウマがあり、食事が出ないものと考えていたが、ありつけた。ベンガル風のチキンカレー。なかなかイケた。CAが持っていた紅茶のポットが古い真鍮であったのが目を惹いた。2時間のフライトはあっという間に過ぎた。私の懸念はチッタゴンの空港で、出て来る荷物が2つの内のどちらかという問題に絞られた。でもきっといい方向に向かう、と信じた。