(12) 八日目 帰国へ
午前3時半、起床。飛行機出発は午前10時20分だが、この地では何があるか分からない。朝早く出て、兎に角チッタゴン空港に到着しておくことが大切。ましてや私はバックパック救出という別のタスクもある。
皆流石に眠たそうだが仕方がない。勿論外は真っ暗だ。だが、バスが来ていなかった。不安が過る。バスが来なければ何ともならない。ラジョウも焦って携帯で電話している。勉強している学校のあるチッタゴンに戻るため、同乗するという先生の妹もちょっと不安そうだ。その時バスが闇の向こうから音を立ててやって来た。とうとうコックスバザールに分かれる時が来た。そしてあっと言う間にバスは我々を乗せて走り出した。
それからは1週間前に来た道をひたすら逆走したはずだ。だが殆どの者は寝ていただろう。外を見ても暗くて何も見えないのだから。7時前にはチッタゴンの街に入り、先生の妹は降りて行った。そして何の障害もなく、空港に着いた。外はすっかり明るくなり、日も差して来ていた。
空港内に入るとチェックインは始まっていなかった。だがS氏は目を輝かせて「カウンターにバンコック行きの表示がある」と喜ぶ。飛ばない場合は表示されないらしく、定刻出発が見えてきた。これは奇跡的な出来事らしい。