不法入国が貴重な戦力に
バーンタオ氏が車で迎えに来てくれた。夕飯を食べようと向かった先は、何とスクンビットのソイにある餃子屋さん。何でと思ったが、レストランの外見だけを見ても面白い。漢字は『山東餃子』だが、英語は『北京レストラン』。如何にも中国人のイメージする山東の餃子とあまり中国を知らない欧米人には分かり易い北京を付けたようだ。
中に入ると驚く。バンコック中心部とは思えない中国的な雰囲気。まだ時間は早いが、既に如何にも中国大陸から来た客がテーブルでビールを飲んでいる。バーンタオ氏もタイ語でビールを注文するが何となく反応が悪い。ウエートレスの会話を聞いていると何と北京語だった。更にはマネージャーらしい女性も北京語だった。
メニューには全て写真が付いている。これで分かる。ウエートレスはタイ語が苦手なのだが、誰でも注文できるようになっている。これだとタイ語が出来ない日本人でも気軽に注文できる。奥のテーブルにはどうみても大陸中国人が座っている。一人は中国の銀行の袋を持っていた。どうやら接待らしい。ここはタイなのだろうか。その後彼らは個室に移動し、何と白酒でガンガン乾杯を始める。もうこうなるとチャイナワールドだ。
ウエートレスに北京語で何人か尋ねると『ミャンマー人』との答え。そうか、彼女達の祖先は国民党、国共内戦でミャンマーに逃れた中国人だったのだ。私が北京語を使うと何となく嬉しそう。給料は1か月6000b、相当低いがそれでも職があればよいという。後で聞けばタイは不法入国してもある時期に申請すれば政府がビザを発給することがあるという。これは日本では考えられないが実は合理的なシステム。不法だが、一定期間低賃金でキチン働いた者はタイにとって必要な人材と認められるのだ。タイ人はこのような安い労働力を使い、『働かない文化』を享受しているように見える。
料理は中国大陸の味がした。コックも大陸から来たのだろう。この店のオーナーも大陸人。所謂ヤワラーの華僑と対比すれば新華僑の活動はどんどん活発になっている。この日の注文はすべて私がした。バンコックにも私が生きる余地があるように思えた。
因みにこのレストランがあるビルには中国系、韓国系の会社が数社入っている。食事の後、ビルの駐車場に停めてあるバーンタオ氏の車に向かうと、タイ人の警備のおじさんまでが『謝謝』と言っていた。バンコック在住20年のバーンタオ氏も目を丸くして驚いていた。