西バライ湖
サレンが『どこへ行きたいか』と聞く。確かに10か月前に来たばかりだし、特に行くべきところはない。そこで突然思い出したのが、一昨日の晩の飲み会。旅行関係者が多いオフィスの飲み会だから、やはりどうしても話題が旅になる。私が『今度の旅はシェムリアップだ』と告げると、それなら『湖へ行け、そこで鶏を丸ごと焼いているぞ、あれは美味い』という声が掛かった。鶏肉は嫌いではないし、行ってみるか。
行って見るかと言っても、地名など分からない。サレンに話すと多分あそこだ、と納得顔。付いて行くことにする。市内をちょっと外れたあたりに、何だか立派な建物がある。最近出来たというショッピングモールとマンション。しかし人影はなく、店も殆ど空いていない。『韓国人客が時々来るだけ』とサレンも素っ気ない。不動産投資の失敗なのだろうか。
郊外に出た。貯水タンクと思われるタンクに日の丸があった。日本の援助で作られたのだろう。その下には『大正小学校』と漢字で書かれていた。奥に学校があった。ここも日本の援助だろう。本当に日本はカンボジアに多額の援助をしてきた。問題はその援助が一般住民の為になっているのかどうか。
既に日が傾いている。30分ほどで目的地に着いた。大きな湖だ。人工湖だそうだが、説明を読むと11世紀に完成したとある。西バライ、東西8㎞、南北2.2㎞、クメール王国時代に作られている。ここはあのアンコールワットを中心にしたクメール王国の水源だったのだ。壮大だ、当然ながらあれだけの巨大都市を賄う水は多量でなければならない。
少し歩いて行くとアキユ寺院という表示があり、見ると崩れ落ちた寺院が現れた。こじんまりしているが、昔はいい感じだったかと思わせる作り。大きな木が往時を偲ばせる。ここは湖を祭るのだろうか。
夕陽が落ちていく。人々は思い思いに眺めている。お店では確かに魚や鳥を串にさし、グルグル回して焼いている。美味しそうだ。5ドルで1羽買って二人で食べる。塩とレモンを付けて食べると本当に美味である。アンコールビールもちょっと飲み、気分が乗ってくる。夜はさぞや賑やかなんだろうと思っていると、何と皆帰り始め、我々は取り残される。夜は真っ暗なのだそうだ。
我々もいそいそと引き上げる。サレンに街の真ん中に送ってもらい、一人で散歩する。外国人が多い一角はどうにも馴染めない。直ぐにGHの方へ戻る。途中に小さな市場があり、その中で麺を売っていたので、食べる。相変わらずこういうものが一番美味いと感じる。