電気のない夜
村には迎賓館と呼ばれるゲストハウスがある。普通の民家は木造だが、ここはコンクリート製。リビングがあり、部屋がいくつかある。部屋にはベッドと机が置かれており、快適に過ごすことが出来る。ここには一般の人も宿泊希望があれば受け入れる。ドネーション込み、1泊2食付で25ドル。
村はかなり広い。裏には池があり、夕日が落ちていく。ゆっくり眺める。森には水が必要だ。そう感じさせる何かがある。午後4時には工房では今日の作業は終了しており、村では炊ぎの煙が立つ。水浴びする人もいる。日が落ちる前に食事をし、日が落ちたら寝る。それが電気のない村の原則だ。
森本さんが村に戻り、話をする。日も暮れて来たので、私には特にやることがない。ただひたすら様々なことを話す。雑音が全く入らず、携帯もならず、ネットも繋がらない環境で、人とじっくり話すのは久しぶりかもしれない。
夕飯は母屋で森本さん及びスタッフと食べる。スタッフが作ってくれた料理だが、何とご飯に味噌汁、焼き魚、卵焼き、野菜の煮物、などが並ぶ。皆森本さんが教えたもので、食材は基本的に現地調達。非常に美味しく頂く。森づくりも食事作りも原理は同じかもしれないと思う。
夕食後コーヒーを頂きながら、また歓談。すると森本さんが「今日は電気いらないですね」と聞く。こんな会話は生まれて初めてだなと思いながら、「ええ、いりません」と自然に答える。実は母屋には自家発電があり、迎賓館にもあるのだが、今夜は母屋のみ使用するという意味。
そして迎賓館に帰る時、中国製のLED電燈を一つ渡される。母屋を離れるとそこは漆黒の闇。本当に暗い。電燈が無ければ何も見えない。このLED電燈が如何に明るいか、灯りが如何に有難いかを噛み締めながら歩く。それでも道に不慣れで、かなり戸惑う。日本では真っ暗と言っても、どこか見える物があるが、ここでは何一つ見えない。電燈から外れた所は何も分からず、進むと道が分からない。
ようやく部屋に辿りついても電気は点かないので、基本的に寝るしかない。トイレに行くにも電燈を提げて行き、歯も磨く。余計なことは何もない。実にシンプルだ。早々に就寝。