森が守ってくれる
窓から明るさが差し込んできた。いつの間にか眠り、起きることもなく、8時間ほど寝こけた。鳥が鳴いている。実に静かだが、外は既に起き出している気配が感じられる。散歩に出る。
村には森がある。今では百年も前からあったように見える木々だが、僅か10年前に植えられたもの。3か月前にはこの村を大洪水が襲ったという。一時は人の背丈ほどにも水が溢れ、工房の機織り機なども全て流された。しかし、その機器を守ったのが、この木々。洪水に流された物が皆木に引っ掛かり、流失を免れたという。これもまた貴重な体験だ。
森本さんは言う。「森が守ってくれた」と。その為にも日々、人は木々と向き合う必要がある。必要になった時だけ、頼っても何もしてくれない。私がこれまで歩いてきたアジアの村々で、同じような光景、話を何度も聞いた気がする。今の日本は災害を科学の力で防ごうとしている。
というより、日本人は今や「目に見える物しか信じられなくなっている」のだ。説明や説得力は数字など、自分の頭で理解できる範囲でしか成り立たない。人間を超えた何かが存在することをもう一度体験し、取り入れなければ何度も同じことを繰り返すだろう。