働くモチベーションとは
朝食は母屋でパンとサラダを頂く。非常にゆったりとして空間の中で、散歩後の朝食は実に美味しい。爽やかな風が吹き込む母屋は極楽だ。しかしこの極楽状態を作るのに、どれほどの苦労があったのだろうか。
食後のコーヒーを頂いていると、女の子たちが上がってきた。広いテーブルの所に座り、何かを始めている。覗きに行くと、何と絵を画いていた。何で朝からこんな所で絵を画くのか。
森本さんが解説する。『若い内に自然と向き合い、完成を高めることは大切。彼女達が描いた絵が、デザインにすぐに使えるわけではないが、一見仕事と関係ないこのような作業を重視している。彼女達には一定の給与を払って、仕事としてきちんと画いてもらっている。』と。
そう、今や日本企業が忘れてしまったゆとり。ゆとりというと『ゆとり教育』などイメージが良くないが、企業内でも車のハンドルの『あそび』部分が必要なはずだ。そのあそびから思わぬものが生まれ、企業が活性化する。森本さんの話と活動は、企業経営そのものだ。以前彼から聞いた『減収増益』の話もそうだ。良い物を作れば必ず買う人がいる、そうなれば単価は上がって行く。薄利多売はいつか行き詰る。
実際この村ではい1つ1つの製品に誰がデザインし、誰が織ったか、名前が書かれている。そして欧米のお客さんはこの村まで来て、気に入った物を買い、更には織り手がいれば、一緒に記念撮影をして帰るという。売り上げによって給与に大きな差をつけることはないとしている所が参考になる。モチベーションとはどこから来るのか。
森本さんは手法は職人さんのそれではなく、経営者の目線で作られている。カンボジアに進出する日本企業の参考に大いになるだろう。因みにカンボジアには若い、安い労働者が沢山いるのは間違いないが、それを束ね、仕事を進めてもらう班長クラスの人材が決定的に不足している。この伝統の森では、その人材が育っているのが大きい。